谷口徹は、いつの間にか本気モードに変わっていた。いや、組み合わせ(川岸良兼、鈴木亨の同組)が、そうさせたのかも知れない。「これはいいゴルフをしないと勝てないなという気持ちが強くなったんです。ですから、第1ラウンドと今日の組み合わせであの二人が一緒で、それも含めていいプレッシャーがありました。プレッシャーがないとダメだと思いますね」と、谷口は語った。シニアだからと軽んじていたわけではない。でも、レギュラーツアーと比べればパワーも違う。従ってそんなに強く意識しなくてもある程度のスコアはつくれるという気持ちが、なかったとは言えない。
大きな違いがあると言えば「俺、飛ぶな」と思ったことだ。「まあ
川岸さんは別格だけれども、自分も飛距離ではいい線いっていると思いましたね。でも、油断は禁物でプレーしないと」と気を引き締めてのプレーぶりを語っていた。
第2ラウンドは、10番からのスタートだった。12番で、いきなりダブルボギーを叩いた。「ティーショットはフェアウェイど真ん中に打ったのに、セカンドでライがきつい左足下がり。番手をあげて、奥に行くのが嫌だなと軽めに打とうと思って打ったら薄めにあたって池にはまってしまった。その池なんて、全然気にしておいなかったんだけど」唯一のダブルボギーだ。
あとは、6バーディ・ノーボギー。この日、5アンダーパーの66、通算4アンダーパーで単独首位に躍り出た。
その内容を振り返ってみよう。ダブルボギー直後の13番(パー3)。昨日、ダブルボギーを叩いたホールだった。谷口は、どう切り替えたのだろう。「12番をダボにして、さあ、ゼロまで戻さないと、と思ったんです」と、前日のダブルボギーのイメージも、そしてこの日、12番の嫌なイメージも、脳裏には残っていなかった。切り替えが速い。いや、見事である。
13番で、6番アイアンで打ってのOKバーディ。さらに15番(524ヤード・パー5)。左カラーから寄せて1メートルを入れてのバーディ。16番、5メートルを入れてバーディ。瞬く間に、ダブルボギーを帳消しして、さらに1つスコアを伸ばした。
後半に入って、1番、4番、6番、そして7番とバーディをもぎ取って32でまわり、この日66。通算4アンダーパーとしたのである。
「福島(6月21日~24日開催のダンロップ・スリクソン福島オープン)で、ドローだけでなくフェードも打ち分けてやってみようと思ってやったらうまくいったんです。もちろん、以前は、両方打ち分けていたんですけど、最近はドロー系が多くてね。そのフェード&ドローの打ち分けが、ドライバーだけでなくアイアンショットも有効に使えるようになったことで、攻めの幅が広くなったんですよ。このニドムは、ティーショットをフェアウェイに置いておけば、あとは、アイアン勝負でいける。その勝負に、フェード&ドローの打ち分けができれば、気持ちが窮屈にならずに攻められる」というのが、この大会の谷口の強みである。
そしてもうひとつ。グリーンのスピードである。「昨日よりも今日のほうが、グリーンスピードが速くなっていて、そのスピードが、ちょうど自分のタッチに合っているんです。だから心地よくストロークできるんですよね」と付け加えた。
ショットのバリエーション。そしてチップショットにも自信があって、さらにパッティングのタッチも悪くない……残り2日間。最高の条件で折り返しての優勝争いになる。
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