寺西明は、プロ入り3年目である。49歳のときプロテストを受験して、合格した。それも、プレ予選、1次予選、2次予選、そして最終プロテストの経路をくぐり抜けての合格だった。同期には、時松隆光、伊藤誠道がいた。この年のプロテストを受験した40歳代のプレーヤー13名のうちの一人が寺西だった。
寺西は、関西では有名なアマチュア選手だった。もちろん日本アマチュア選手権や関西アマチュア選手権など数多くのアマチュア競技に出していた。49歳で、突然プロになろうと決意した異色の選手だ。しかも、人材派遣の会社の社長でもある。
「いや、40歳になったときに、決めていたんですよ。プロを目指そうと。田村(尚之)さんも
プロ転向しましたしね。シニアツアーもそうですが、できればレギュラーツアーにも挑戦したいというのが、夢なんです。テストは、もし落ちても今年1回限りと決めています」と語っていた、見事、合格して、今年3年目。シニアツアーでも、2017年の最終戦、いわさき白露シニアで初優勝を飾っている。
第2ラウンドを終えて、寺西は、通算3アンダーパーで首位の谷口徹と1打差の2位で、第3ラウンドを迎えた。最終組の寺西の同伴競技者は、もちろん谷口徹である。「谷口さんとは、僕がアマチュア時代からよくしっていますし、一緒に何度もラウンドしていましたから、特別な意識というのは、ありませんでした。でもやっぱりショートゲームが上手いですね」と言った。
1番で、いきなりバーディ。そして3番でボギー。4番でバーディ。この時点で、谷口がひとつ落として谷口と並んだ。その後、谷口がスコアを伸ばせずにいた。終わってみれば、グイグイと上がってきたマークセンが通算4アンダーパーで首位。そして、寺西、谷口徹、川岸良兼、金鍾徳と寺西の4人が、通算1アンダーパーで横並びの2位タイとなった。
「いや、こんなもんやないですかね。確かにスコアは落とした(この日73)けど、自分の持ち味も出せていましたし、予想通りというか、ピンの位置も難しいところに切ってありましたし、しっかりと(ミスをしたら)ペナルティもありましたしね。むしろ、最終ラウンドに向けて、どの位置で迎えられるかという意味では、いい位置だと思います」と語る。
「JGA、KGU(関西ゴルフ連盟)の競技では、こういうコースでいっぱい戦ってきていますから、実は、こういうセッティングは、自分にとっては楽しいんですよ。だって、自分の技術が足らんものがよくわかりますし、いまの自分の実力が、どこにあるのか測れますからね」と確かに、愉しんでいるという気持ちが伝わってくる。
この日、2バーディ、4ボギー。通算1アンダーパーで最終ラウンドを迎える寺西は、こう語っている。
「誰かのスコアを気にして戦うとか、上に誰がいるとか、もちろん勝ちたいんですけど、そういう意識じゃなく、むしろ自分とコースとの戦いモードに入れるか。そういう状態に自分が入れれば、きっと勝機があると思い出す」と。
そういえば、3年前のプロテスト時の取材で、寺西の信条を聞いたことがある。すると「オール・ホール・イズ・バトル・フォア・アス=all hole is battle for us」私たちにとっては、すべてのホールが闘いの場である……という言葉だった。
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