第2ラウンドを終えて、谷口徹が通算4アンダーパーで首位に立ったときには、このまま72ホールを走り抜くのでは、という勢いがあった。ところが第3ラウンドで、迷わず振り抜いていたドライバーショットが曲がり始めた。それを最終ラウンドまで引きずってしまったのである。
「雨もそうなんですが、風の読みが解らなくなってきて、どこか半信半疑で打ってしまうので、しっかりと振り切れませんでした」と谷口は述懐する。ゴルフでは、迷いが最も禁物だ。迷ったぶんだけ曲がるという名言があるほどで、谷口に、その迷いが時折襲っていたのだろう。
「やっぱり期待感もあるわけで、それに応えて、勝たなければいけない、勝ちたいという欲が
でてきたのは確かですね。風の読みがうまくいかなかったことに尽きると思います」と語った。往々にして、迷うほどに考えすぎる。考えすぎると、結論が出しにくい。よく思考停止しろと米国のスポーツ心理学者が選手に提案する。停止させて、最後は勇気と自信に委ねるということだ。谷口は、きっとそれができなかったのだろう。
2番で、第2打がバンカー。しかも目玉となって寄らず入らずのボギー。それでも5番では、9ーメートルのバーディパットを沈めた。流れをつかめなかったのは、7、9番のボギーである。とりわけ9番では、3パットでのボギー。折り返して、11番でバーディを奪うも、12番では、枝にあたって池に落としての「ナイスボギー」だった。
優勝争いをしている最終組のマークセンは、1、4、6番とバーディ。7番でボギーを叩いたものの、強い風雨で、ほかの選手が苦しむ中で、いっきに飛び出した。
ようやく谷口が、本来の谷口らしさをとりもどしたのは、終盤だった。通算イーブンパー。マークセンとは5打差の2位となった。
「(でも、レギュラーツアーとは違って)ミラクル的なロブショットとか、いろいろなアプローチの技もそこかしこで出せたしね。やっぱり拾わなければいけないというときに、技の引き出しを出してまとめるという楽しさが、シニアにはありますね」そうは言っても、谷口は、レギュラーツアーを主戦場としている。「この大会では、あまりシニアという感覚はなかったですね。まあ、スケジュールさえ合えば、また出てみたいと思います。それにしても、マークセンは強いですね。自信を持ってプレーしていますよ。レギュラーツアーよりも、落ち着いてプレーできていると思う」と言った。
「悔しいですね」と最後に一言呟いた谷口。その本音の言葉が、ニドムの森に強く響いた。
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