強い。強かった。3連覇を達成したプラヤド・マークセンは、2位以下の選手たちを寄せ付けなかった。トーナメントリーダーとして最終ラウンドを迎えたときの鉄則がある。リードを意識して守りの気持ちで1番ティーインググラウンドに立つのは最悪の戦略。全盛期のタイガーは、トップで最終ラウンドを迎える展開では圧倒的な勝率の高さを誇っていた。そのタイガーが勝ち切るために心がけていたことがある。それは「トーナメントリーダーで迎えたときこそ、序盤で攻めのゴルフを展開すること。先制パンチでリードを広げ、追いかけてくる選手たちの戦意を喪失させるぐらいのつもりで積極的なプレーを仕掛ける。そこで差を広げてしまえば、後は自分の
ペースで戦っていける」。
この日のマークセンは、まさにそんなゴルフを展開させた。1番(パー5)。振り付ける雨の中、ドライバーショットはフェアウェイセンターに打ち出す会心の1打で、ユーティリティークラブを使った第2打でピン左4メートルに乗せるイーグルチャンス。あっさりバーディを奪った。4番(パー3)でも60センチにぴたりとつけ、さらに6番でも2メートルを決めて通算7アンダーパーにまでスコアを伸ばした。リードを広げたら、積極策を少しセーブし、無理をせずに堅実なゴルフへと切り替える。自分でゲームの流れを作り出し、自分のペースで勝つべくして勝ち切った大会3連覇であった。
本当は「最終ラウンドに追いかけるゴルフの方が好き」といった。「ずっと攻め続けるゴルフの方が楽しいから…」というのが、その理由だった。どちらも勝ちパターンに持ち込めるのも強さの証明であろう。
優勝を強く意識した理由もあった。実は息子のアイス君が、この日タイで出家したのだ。タイでは、徴兵と出家が義務付けられているという。出家しての修行は最低1週間。そのまま僧侶となる人もいるが、ほとんどの場合、出家期間中に仏教の知識を学び、その後通常の生活に戻るのだそうだ。アイス君は出家期間を3週間ほどにしたという。出家せずに死んでしまうと親不孝という考えがあるとのことで、息子の出家は、マークセンにとっても大きな喜びで、慶事なのだという。そこで、優勝の知らせを持っていったん帰国し、息子とお祝いをするのが楽しみにしていたわけだ。
大会3連覇でシーズン3勝目。優勝賞金1600万円を加えて今季の獲得賞金は3812万円余。こちらでも2位に大きく水を開け、3年連続賞金王の座も大きく引き寄せた。
大会4連覇の記録を持ち、今大会ではテレビのゲスト解説者として競技を見届けた青木功(JGTO会長)も「マークセンは、まだまだ元気だし、ゴルフもショットからパッティングまで、とにかくしっかりしていて穴がない。私の記録を塗り替えるんじゃないかと思っているし、そうしてほしいね」と、エールを送った。シニアのマークセン時代は、まだまだ続きそうだ。
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