渋野日向子のコメントは、リズミカルで小気味いい。それは彼女のゴルフを、そのまま見ているようだ。
1番(パー5)でバーディ。4番(パー4)でバーディ。「今年一番といえるほど、ショットの調子がいいな」という状態でスタートした。ところが、6番(パー5)。その第1打が、つま先下がりのライ。残り220ヤード。3番ウッドを手にした。「フェードになりやすいライだったので、少し左目から狙って行きたかった」というボールが、左の林。赤杭のペナルティエリア。本人いわく「予想外のボールの球筋」だった。普通なら、そこで落胆する情況だけれど、彼女は、同じ場所から、同じクラブで打ち直した。彼女は、あえて、同じ場所から
打った。結果的には、ダブルボギーとなったけれど「仕方がないなぁ」と気持ちを切り替えた。「まだ1日目の前半なので、先が長いですから」仕方がないと切り捨てられるところが、彼女の攻めと守りのリズムを作っているように見えた。
渋野の切り替えの素早さの典型が、続く7番、8番のバーディ奪取である。
7番(390ヤード・パー4)。残り132ヤードを7番アイアンで2.5メートル。入れてバーディ。8番(148ヤード・パー3)も7番アイアン。バンカーに入った。でも、そこからチップイン。すぐにダブルボギーを取り戻した。
「バンカーやアプローチが、ほんとにへタクソなんで、あそこのバンカーからあのチップインは、ほんとに助かりました」とケロリと言った。下手を卑下するのではなく、下手だと認識しつつ、うまく行けば嬉しいというプラス思考だ。
「きっと、そのときよりも表情が険しかったと思うのは、9番でボギーを打ったときだったと思います」と彼女は言った。9番、距離が短いパー4。3番ウッドで第1打。その第2打。残り60ヤードほどを56度のウェッジを持った。飛球線方向に気になる木が立ちはだかっていた。当然、木の上を抜けるだろう、抜けるかなと思っていたけれど、木に当たってしまう。やや左足下がりに見えた。案の定、木に当たった。「そうなるよなぁ」と思った。渋野は、そこをパーセーブできなかったことのほうが「険しい表情」だったと言った。
攻撃と守備。攻めと守り。その機微、微妙な心の動きや物事の判断力、本能力が渋野のゴルフを支えているのだろう。この日、5アンダーパー。7位タイで第1ラウンドを終えた。渋野は、こうも言っていた「イライラしているときの自分が情けない」だから、イライラしない。彼女のゴルフの底辺に、それもある。
「攻めのゴルフが、今日はできていたと思います。それに、楽しく回れました。畑岡奈紗ちゃんとユ ソヨンさんでしたから」と言った。
同じ組の畑岡も「最初は、ティーショットが不安定で、ボギー、ボギーの連続でスタートしたんです。途中、ほかの2人がスコアを伸ばして、ひとり、取り残されちゃったかな、と思ったこともありましたけど、7番ホールで、ふと気がついたことがあって、思いきってやってみたら、それからショットがよっくなって、追いつけました」と言った。畑岡の気づきは、アドレス時のボールとスタンスの距離感だった。「たぶん、ミリ単位だと思うんですけど、ちょっと距離を(ミリ単位で)近づけたらよくなって、思い切ってやってみようと。それでなんとか回れたという感じです。ですから、今日は、それ以外は、良かったというのがないですね」という畑岡は、1、2番連続ボギーのあと、その7番の気づきから、3連続バーディ。さらに後半でも、4つのバーディを奪って、5アンダーパーで渋野と並んだ。
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