6バーディ・1ボギーの67をマークして通算11アンダーパーとスコアを伸ばした大里桃子が、スコアカード提出所に向かっていると、先にホールアウトし、プレスインタビューを受け終えてクラブハウスに足を運ぶ渋野日向子とすれ違った。渋野から声がかかった。「ナイスプレー!明日は、私も追い上げるから、最終ラウンドに一緒に回れるといいね」。
二人は、ジュニア時代から仲が良く、お互いを親友と認め合っている。スコアカードを提出し、インタビュールームに姿を見せた大里は、早速、すれ違ったときのやり取りを聞かれた。それで、渋野に声を掛けられて、どう答えたのか。「なんか、上手い言葉が浮かんでこなくて、“そうだね…”ぐ
らいしか返せませんでした。一緒にラウンドしたら楽しいのはわかっているんですけど、それって、私が追いつかれるってことですよね。今回は、追いつかれないように、逃げまくろうと思っているので、同じ組じゃないほうがいいです(笑)」
プロテスト合格後23日でツアー初優勝したのが昨年のCATレディス。実は、それ以来ドライバーショットが不安定になり、今シーズンは乱調ともいえる状態にまで落ち込んでいた。不調のピークは、渋野が最終ラウンドに8打差からの大逆転劇を演じたデサントレディス東海クラシックだった。つい2試合前のことである。「ドライバーショットが、本当に滅茶苦茶になって、どこに飛ぶかわからない状態でした。怖くてドライバーを使うのは、1ラウンドでせいぜい3回ぐらい。不安の連続の中で、プレーするのも苦痛でした」。救いの手が伸べられたのは、クラブ契約しているメーカーのスタッフからだった。
トップアマとして競技会にも出場しているというそのスタッフからは、コンパクトなスウィングにすることを勧められたという。「自分ではスリークォーターぐらいにしたつもりでした。でも、動画で撮ってもらったのを見せていただくと、十分にフルスウィングの大きさになっていたんです。自分の感覚と、実際の動きとのギャップが大きすぎたんですね。それからは、自分ではスリークォーターのスウィング感覚で打つようにしたら、突然、ドライバーショットの乱れがなくなり、安定した弾道でフェアウェイをキープできるようになりました。日本女子オープンでも練習ラウンドのときからフェアウェイを広く感じて、“これなら優勝スコアは通算20アンダーまでいくんじゃないか”なんて思っていました。ドライバーショットがパラッパラだった私がですよ」。
風の中のプレーとなった第2ラウンドも、ドライバーを使った14ホール中11ホールでフェアウェイをとらえていた。「ドライバーが、ちゃんと振れて、フェアウェイにボールを置いておければ、ゴルフってこんなに楽にできるんだ。自信が戻ってきて、パッティングでというより、パー5の2オンも含めてショットでバーディを決められました」。
気がつけば秋―。賞金ランキングも気になりだす時期を迎えている。大里は、今大会前まで獲得賞金1561万円余でランキングは58位にいる。昨シーズンの優勝で得たシード権もボーダーラインにいる状態だ。
本選手権で一気にシード当確とするか、もっと大きくメジャーでプロ2勝目を挙げるか。そんなことさえ思いたくなるほどの復調ぶりを示している。
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