ドライバーショットの絶不調を脱して安定を取り戻した大里桃子には、もうひとつ手に入れたものがあった。本選手権の練習日に穴井詩から勧められた本である。
「すみません、本のタイトルは、教えたくないんです。内容は、プラス思考になるためのものでした」。最後が過去形になるということは―。「はい、ホテルの近くに本屋さんがあり、行くと売っていました。購入して、一気に読みました。ものごと、悪いように考えたり、口にしたりすると、結果も、そうなっていくというマイナス思考への警告もありました」。
前半、ドライバーショットが安定し、フェアウェイからグリーンを狙える状況が多く、3バーディを決めることができた。
後半は、スウィングのタイミングが微妙にずれるシーンがあり、狙ったところに打ち出せずにチャンスを作れなくなった。さらにグリーンをはずして、アプローチショットとパッティングでパーをセーブするホールが続いた。特に15、17番はピンチだった。15番は右バンカーに入れて、ピンまで25ヤードほどの距離があった。17番では、左ラフからの第2打をグリーン右手前ラフに入れ、そこからラフ越えに20ヤードほどのキャリーを出して止めなければいけない状況だった。どちらも1メートルほどに寄って、パーをセーブした。
「こんな調子で後半は、ひたすら耐えるしかなかったのですが、微妙な距離のパーパットも全てカップに転がり込んでくれました。“こうやって我慢させられているのは、そのあとにご褒美が待っている証拠”だと、しのぎ続けました。それを苦しいとは思いませんでした。ええ、プラス思考で切り抜けられましたね」。
耐え忍ぶ展開の中で、大里は鼻歌さえもらしていた。
そして、最終18番(パー5)で、確かにご褒美が待っていた。2オンのイーグルチャンス。残念ながら1パットに仕留めることはできなかったが、楽々2パットのバーディ締めとなり、先に通算15アンダーパーでホールアウトしていた畑岡とトップに並んで最終ラウンドを迎えることになった。
最終ラウンド、最終組での直接対決となるが、大里に気負いは感じられなかった。「奈紗ちゃんのプレーも見ながら、自分もついていって競えるように頑張ります」不思議に肩から力が抜けている大里が黄金世代対決でどんなゴルフを見せるのか。楽しみではある。
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