10番からスタートした比嘉一貴は、11、14番とボギーを先行させた。15番で初バーディを奪ったものの、距離の長いパー3ホールである17番をまたボギーにして、前半の9ホールは2オーバーパーで後半にターンした。ここでもボギーが先行して通算3オーバーパーにまでスコアを落としてしまった。
大会前の練習ラウンドで2日間プレーした。「恥ずかしながら、2日間のプレーでは、ひとつもバーディがありませんでした。アンダーパーになる気配もなく、本番を迎えてしまいました」。それもあって、第1ラウンドに3オーバーパーまでスコアを崩しても、焦りはなかったという。それよりも、同組でラウンドした東北福祉大学の先輩、池田
勇太のプレーに誘発されるところがあった。「勇太先輩が、いいゴルフをしていたので、ついていこうと思いました」。パー3の2番(212ヤード)で5番アイアンのティーショットが、ピン手前3メートルについた。「このコースは、奥にいったら、いったきりになる。止まってくれずに、ラフにまで転がり込んでしまうから、常に手前エッジからピンの間に着弾させること」そう自分に言い聞かせてきた比嘉なりの戦略が、ようやく実践できた。このバーディパットを沈めて手応えを感じたという。
「なんか、自分の流れを作れたと思ったのです」
続く3番(パー5)も第3打を3メートルにつけた。これも決まった。流れとは面白いもので、2番以降、3~4メートルのバーディチャンスが立て続けに生まれ、そのチャンスをことごとく決められた。5、7番も、この流れでバーディを加えることができた。3オーバーパーとなった10番からの残り8ホールで4バーディ。あがってみれば、1アンダーパーとなっていた。
8月のKBCオーガスタでツアー初優勝を果たしてから見えてきたものがある。意のままにならない展開なら、チャンスがくるのをじっと待つ。バーディを決めて流れを感じたら、積極的に自分でチャンスを作りに行く。ラウンドの中での押しと引き。コースとの対話というか、駆け引きというのか。そういうもので以前よりもずっと幅が広がっている。見えたのは、そういう自分である。厳しい設定のコースでは、そのコースとの対話もずっと多くなる。疲れることではあるのだが、それを4日間続けたところには、どんな世界が待っているのか。比嘉は、難コースとの対話を楽しめるようになった。
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