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市原弘大は、どこか清々しい表情でホールアウトしてきた。誰もが、悪天候と中断でストレスが溜まるプレーを強いられている中で、市原の表情は、少し違っていた。この日1アンダーパー70というスコア。それは、18ホールを消化しきった選手の中では、ベストスコアだった。「実は、こういうコース、セッティングが大好きなんですよ」と市原は、語り始めた。
プロアマで1ラウンド。そして練習ラウンドは、9ホール。あとは歩きでコースチェック。そのとき、市原は、このコースの佇まいやレイアウトに、ぞっこんだった。「ああ、僕向きのコースだ」と思ったという。ひとたび、そう思うと苦しい場面でも凌げる。
「1ショット1ショットをどこに置いたら次が良いかなっていうのを、常に考えながらプレーしていて。ただ、僕はそういう風にプレーするのが結構好きなので、スコアが出る、出ないはともかく、そういう風に1打1打に意味合いを持たせてプレーするのが凄く好きなので、こういうセッティングは僕は凄く面白いと思うし、日本オープンらしいという感じですね。スコアも良かったですし、楽しくプレーは出来たかなと思います」。
面白いことに、コースやセッティングにストレスを感じず、しかも自分に向いている、好きだと思い込んでしまうと、ミスも許容できる。許容範囲が広がれば、ゲームの中でのボギーも焦らない。
午前組、朝7時20分。10番からのスタート。この時間帯も市原を助けたのかも知れない。市原は、スタート前に、もういちど反芻した。「まずは、ダブルボギーにしないこと。もちろん、OBとか林に入ってロストしてしまったとか、そういうのは仕方ないですけど。素ダボを打たないこと。そこを第一にという感じですね。何ていうか、無理をしないという訳ではないですけど、とにかく1打1打がアバウトにならないことですね。常に、これはどうする、コレはどうするっていう感じで、そこをしっかり緩めずにね」と教えてくれた。
悪天候。雨。「雨に濡れたり、傘を持ったりして手が空かなくなったり、色々やる事が増えたり。そういうのは勿論あれですけど、でも僕も元々アジアに行ったりとか、全英オープンに行きたいという思いが普段から強かったりとか、そういうのがあるので。まぁ、天候が悪くても何でも、あるがままにやるという感じです。なので、そこまで嫌っていうのは無いですね。結局のところ、全員同じ中でやるわけですし……」と、達観していた。
残り36ホールある。首位とは、暫定で4打差。十分チャンスがある。「やっぱり、どこまでもコースと対峙して、今の自分に出来ることを合わせてやっていくのが良いかなと思います。誰が相手だとか、首位とどれだけ離れているとか、そういうことよりも大事ですからね。それが最後までしっかり出来たら、結果的に良い所にいられるんじゃないかなと思います」と言い。最後に、念を押すように「本当に色々考えさせて、1打1打いろいろ考えて、色んな球が必要で…というのが好きなので。このコースは、大好きです」という市原弘大。それだけ惚れ込まれたコースは、市原に、どんな反応を示してくれるのだろうか。
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