7バーディ・1ボギー。66。もちろんこの日のベストスコアを出した田村尚之のゴルフは、まさに異次元だった。どの選手もシビアなホールロケーションに悩まされ、深いラフに手こずり、ティーショットの落下地点では、狭いフェアウェイに困惑するなか、まるで秋のそよ風のように飄々とバーディを積み重ねていった。
「こんなプレーもできるんですねぇ」と、ホールアウトしてクラブハウスに戻ってくるなりの第1声。そして「今日は、ハナマルです!」と自賛した。
小気味の良いゴルフだった。5番(パー5)で3メートル。6番も3メートル。7番ボギーのあと8番でも3メートル。さらに折り返して、11番(パー5)では2オンして10
メートルを2パットのバーディ。12番、4メートル。16番、3メートル。17番も3メートル。いわゆる1ピンの距離をことごとく沈めての66だった。
一気に、3位タイ。首位の谷口とは、4打差で後半のラウンドへと突入する。
「先週のコマツシニアの最終日から、パッティングの感触がよくなってきたんですよ。うまく振り子式で打てるようになってきて、調子いいんです。ショットは、梅雨明けからですね。不思議に持病の背中、脇腹が梅雨明けになると治って来るんです」と言った。田村は、試合の遠征先でも体のケアを怠ることはない。だから宿は、駅の近く。そこから電車に乗って治療にいく。「僕が通っている治療院は、全国展開していて、そこを探しながら毎日通います。電車で1時間は通勤圏内です(笑)。ええ、新幹線に乗ってもいきますよ。行き帰りの電車は座れるのが条件ですね。ですから、帰りは座って、駅弁を買って食べるんです」なんとも、まさか駅弁プロゴルファーがいたとは……。
第1ラウンドの遅れは、睡眠不足からだという。「(スタート時間が早いので)夜10時に寝たんです。でもなぜか2時に目が覚めて眠れなくなりました。でも、今日のゴルフは、ほんといえば、パッティングにしても、ビビリながらなんですよ。ただ僕にとって幸運なのは、この日高の研修生がキャディをやってくれて、ラインの読みは、全部、彼まかせでした。それが良かったんですね」と謙遜する。
6月に下見を兼ねた練習ラウンドにやってきて「あ、いいコースだ。ここは好き、と思いました。だって、グリーンがまんじゅう型、小さい。グリーンも硬め。左右のラフでフェアウェイが狭い。グリーンは高い球で止める……僕が、もし勝てるとしたら、こういうタイプのコースだろうなぁ、と思っていました」という田村。そうはいってもこの試合で6週連続の連戦。体のケアもしっかりとしなければいけない。
「残り2日間ありますから。まだまだです。でも、パッティングもいい感じなので、やれることは全部やりきります」と言った。そして、飯能駅発、17時57分の電車に乗って、池袋にある治療院へ、足早に向かった。今夜の駅弁は、きっと美味しいだろう。
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