バウンスバックといえば、全英女子オープンで日本女子選手として42年ぶりに優勝を遂げた渋野日向子が、有名にした言葉だ。ボギーを叩いた直後のホールでバーディを奪い、スコアを取り戻すことをいう。本選手権では、地元の日高高校出身で第1ラウンドから好位にいる清水洋一が、第3らウンドにこのバウンスバックで粘りのゴルフを展開した。
2番(パー3)の3パットからのボギーに続いて3番ホールもボギーにした後の4番(パー5)でフェアウェイから打った第2打をグリーン右花道に運び、1メートルに寄せて最初のバーディを奪った。距離の長い7番(パー4)では、アプローチショットを寄せきれずに、またもやボギーとしたが、続く
8番(パー5)をバーディにしてバウンスバックした。第2打では5番アイアンを手にして「ピンまで60ヤードを残す」というレイアップ作戦をとった。「しっかりスピンをかけていかないと、ピン近くで止めることができないという状況でしたので、しっかり計算ができていました」。
11番のバーディ直後の12番ではボギー。バウンスバックの逆パターンとなったが、最終18番ホールでは「ティーショットをうまくフェアウェイに置けたので、バーディ締めを狙いました」。ピンまで107ヤード。ロフト50度のウェッジでピンの根元50センチにつけた。このバーディで、第3ラウンドのスコアもイーブンパーに戻した。これも広い意味でのバウンスバックといっていいだろう。
苦しいラウンドではあった。「ショットも距離を合わせられないホールがたくさんありましたが、それよりもパッティングでショートしがちというか、カップに届かないことばかりで…。キャディにも“もっと打ってください”と言われたんですけど、気持ちはそうしたくても手がいうことをきいてくれなくて、イーブンパーが精一杯というゴルフになってしまいました。打ちたくても、打てない。打ったら、すぐにカップを通り過ぎて2メートルぐらいオーバーしていきそうに見えてしまうんですよ。ええ、このコースでは、これまで何度も痛い目に合っているので、頭なのか心なのかが怖がってしまうんですよね。これを振り払うことなんて、僕にはできそうもありません。いや、できません。だから、最終ラウンドも、そんなことと付き合いながら、我慢のゴルフをしなければならないと思っています」。そんな中でも、戦略だけは、しっかりと考えていた。「我慢ではなく、狙っていけそうなホールもある。前半の1、8、9番と後半の10、11番の5ホールです。ここでいかにチャンスを作り、スコアを稼ぐか。そして、あとは、ひたすら我慢です。ま、計算どおりにいけるわけではありませんが、最終ラウンドにこれがどれだけできるかでしょうね」
それが「今の自分にできる精一杯のゴルフ」と清水は、自身を冷静に分析している。自分のゴルフ。いうのは簡単だが、実践するとなると難しいのも“自分のゴルフ”である。清水の最終ラウンドがどうなるのか。注目していきたい。
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