谷口徹が、独走か、と思われたのは、4番、6番、8番とバーディを奪って通算11アンダーパーまで伸ばして2位に6ストローク差をつけたときだった。やっぱり強いというゲームの流れが大きく変わったのは、後半に入ってからだ。いや、正確にいえば、谷口が13番(パー3)でボギーを叩いてからだった。ゲームの流れというのは、1打で大きく変わることがある。その言葉が、今日の谷口にあてはまっている。
「難しくないラインのパッティングをちょっと引っ掛けてボギーにしたんです。そこからティーショットにまで影響して、難しくなってきたのは確かです。イメージ通り打てなくなってきたんですね」と言った。
メンタル的な過剰反応
なのかも知れない。特に、コースセッティングがシビアになり、しかもホールロケーションが厳しい状況下になると、たかが1打のミスであっても増幅し、神経とメンタルにダメージを与える。
13番ボギーのあと、14番、16番とボギーとし、この日はイーブンパーでホールアウトして、2位のウィラチャンと2打差で最終ラウンドを迎えることになる。「それは勝ちたいですよ。シニアでは、いちばん若いわけですし、敵はレギュラーに比べれば少ないでしょう。とりあえず今回は、最大の敵、マークセンが低迷しているし。早いうちに勝っておかないと、来年になればまたシニアルーキーがやってくるしね。でも、去年よりもプレッシャーは少なくなりましたからね。去年は勝たなければいけないような雰囲気でしたから(笑)」と言った。
同組のウィラチャンが、静かに静かに迫ってきている。2打差。
「彼は、アジアのレジェンドですから。何十勝もしているし、そう簡単に崩れる選手ではないですよ。うまいですよ。そう、シニアの選手は、みんな上手いんです。しぶといしね。これもひとつのゴルフの面白さだと思いますよ。だから、早いうちに勝っておきたい」と谷口は、吐露する。
2打差。その2打差をアドバンテージに「うまくやっていければいいと思います」と言って、ポロリと語ったのは「勝って帰りたい。勘違いでもいいから、勝つことによって、レギュラーツアーの糧にしたい。やっぱり優勝争いをして勝つというのは、大事なんですよ」と言った。
優勝の味というのは、どれだけ選手に自信や希望、モチベーションを与えてくれるのか、ということを谷口は、知っている。それが「弾み」になるように最終ラウンドを締めくくりたい、と心底願っているに違いない。
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