3打差をひっくり返すのに、それほどのホール数は必要なかった。黄金世代の原と小祝の最終組での直接対決。ともにバーディをとってのスタートで、白熱の戦いが予想されたが、突っ走ったのは原で、一方の小祝は、前日までの安定したゴルフが影を潜めてしまった。
原は2番で4メートルの難しいパーパットを沈めると、続く3番で、今度は同じ距離のバーディパットを決めた。そして、一気に首位の座を奪取することになったのは、小祝の予想外の乱れがあったためだった。
4番(パー3)をボギーにした小祝は、続く5番でダブルボギーを叩き、自ら原に首位の座を明け渡してしまったのだ。ここからは、原が6、8、9番と立て続けにバー
ディを奪い、小祝を突き放していった。アイアンショットは、攻めながらも、上りラインのパットができるようなエリアに乗せられた。そして、そのパットが決まる。
この流れに原は乗り切った。ラウンド中に、何を感じていたのだろう。ホールアウト後に聞くと、こんな答えが返ってきた。
「自分がやりたいようにやれるって、なんと楽しいのだろう。はい、そんな気持ちで1打に集中できましたし、スウィングのことを考えることもなく、次は、どんなショットでどこに落として止めようか…と、スコアメイクのことだけを考えればよかった。パッティングにしても、技術的なあれこれは頭の中から取り除けて、ライン読みと、ストロークに集中できました。ゴルフって、楽しい。心で笑っていました」
アイアンは、先週新しいセットが組みあがった。それを手にジャンボ尾崎邸の練習場にいき、ショットとクラブを披露した。尾崎には「おう、これは、今までで一番いいな」と太鼓判をおされたという。「それで、今大会での投入を決めました」。
先週がオープンウィークとなったことでもうひとつ確認できたことがあった。パッティングのデータをとり、分析してもらったところ「ボールのバックスピン量が多すぎて、転がりが悪くなっているので、ラインに乗せにくい。そう診断されました。順回転になるように、少しグリップ位置を下げて構えるようにしたら、カップインの確率が高くなったんです」。
本選手権に向けては、もっと前から準備してきたこともある。昨年、第2ラウンドまで上位にいながら、後半に失速した苦い思い出がある。「実は…」と原は打ち明けた。「3日目の朝、ぎっくり腰をやってしまって、それまでのスウィングができなかったんです」。
今年は、昨年のリベンジという意味がある。「昨年の反省から、大きな大会の前には、しっかり体調を整えておくことを心がけてきました。第1日の腹痛は本当に信じられませんでした。でも、ラウンドの前半でおさまったので、事なきをえました。ジャンボさんに“スポーツ選手は体・技・
心が大切なんだ。まず、体だぞ”と何度も言われてきましたし、実践してきたつもりです」。
10番にターンしてからは足踏み時状態が続いたが、15番(パー5)で8メートルのバーディパットを決めた。もちろん上りで、しっかりヒットできるラインだった。さらに17番(パー3)では、グリーン右のラフからのアプローチショットをチップインさせ、5度、6度と小さく、でも力強いガッツポーズを見せた。最終ホールをボギーにしたものの、終わってみればスタート時の3打ビハインドは、逆に4打リードになっていた。プロ2勝目、そして日本女子オープンというビッグタイトルに大手を掛けて最終ラウンドに臨むことになった。2日連続での黄金世代対決である。原は断言した。「攻めていって、もっと差をつけるぐらいの気持ちとゴルフで、やり切りたいです」。
ビッグチャンスが巡ってきたのではなく、自分のゴルフでたどり寄せた。もう一日、二人の戦いを楽しみたい。
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