「正直、いまの気持ちは悔しいです」と、小祝さくらは、小さな声で呟いた。振り返れば、第1ラウンドで66。第2ラウンドも69。このまま独走かと思われたけれど、第3ラウンドで1オーバーパーの73。「(敗因をあげれば)3日目ですね。このプレーがいちばん悔しかったと思います」と小祝は言った。
最終ラウンドは、2番でボギー。そして3番、バーディ。4番ボギー。5番、バーディでちぐはぐなプレーが続いた。「スタート前は、前半で2アンダーパーは縮めようって思っていたのですけど、ショットも悪かったし……。このコースセッティングは、大きく曲がってのボギーは納得いくけれど、(多少ラフに入って)なんとかなりそうなと
ころからのボギーが痛かったですね」とはっきりとしたミスではない微妙なミスを語る。
ほんのちょっとしたミス。それはひょっとしたら1ストロークでは数えられない小数点のスコアかも知れない。でも、その積み重ねが1打になる。小祝は、攻めるゴルフをした。だからリスクを承知で報酬を得るというプレーをしなければ優勝に結びつかない。そういう絶妙なセッティングの罠に、小祝は嵌ってしまったのかも知れない。
不運と判断ミスの象徴は、2番(416ヤード・パー4)の第2打だった。バンカーに入ったボール。「そこからは6番アイアンの距離だったんですけど、フルスウィングができなくて、ユーティリティーを使ったんです」でも、思えば今週は、バンカーからのミスでスコアを崩す場面が、いくつかあった。第3ラウンドの「15番でのダブルボギーもそうでしたね。バンカーショットで、ちょっと(フェースの)歯にあたる傾向があったことは確かです」と反省する。
前半を1アンダーパー。しかし首位を走る原英莉花とのストローク差は、縮まらない。原も、前半を1アンダーパー。その差はスタート前の4打のままだった。小祝にとって本選手権の予選通過は初めてのことだった。アマチュア時代の2015年初出場はカット。プロ転向後の2018、19年もカットに終わっていた。「だから最終ラウンド最終組でプレーするのが夢で、(今回は)嬉しかったんですけどねぇ。チャンスある位置にいながら、掴めなかった。それも3日目のプレーに悔いが残りました。攻めていく気持ちはありましたけど、その気持的にも、うまくコントロールできいていなかったんだと思います」と語った。
黄金世代の小祝と原。コースを離れてもプライベートでは映画鑑賞に行ったりする仲良しである。だからこそ、勝ちたいという気持ちが、お互いに人一倍強かったのだろう。その気持がプレーに表れて、双方にリスクと報酬の際どいショットの応酬で、最後まで緩みのない好ゲームを見せてくれたのだと思う。
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