ティーショットを右ラフに打ち込んだ12番(パー4)。今平は、ボールが沈んでいる状況を確認すると、ショートアイアンを手にした。その間、何らの逡巡もなかった。フェアウェイに打ち出して、残りはピンまで100ヤード。3打目をウェッジでピンそばに寄せて難なくパーをセーブした。
ラウンド中、どんな状況でも顔色を変えることはなかった。その裏には全米オープンの経験があった。舞台となったウィングドフッド・ゴルフクラブは、ニューヨーク州にあるリンクス風コースで「その難しさは、ちょっと考えられないほどだった」という。「あの中でやっていたら、ボギーが出るのは当たり前。必死にやってもボギーになるのだったら、その結
果に一喜一憂しても仕方がないし、それまで自分がやってきたゴルフに対する考え方も変わりました」
それまでの今平は、ボギーは打っちゃいけない。そう思ってプレーしていたという。「ある意味、自分を縛りながらゴルフをしていたように思います。全米オープンでは、どんなに調子が良くても、それが通用しないことが多々あるんだと考えさせられました。打つ前には考え、打ってからは、もう次の1打に気持ちを向ける。そうしたことの連続で、最後に結果を受け入れる。なんというのか、ゴルフをする覚悟が固まったように感じました」
それが、12番(パー4)でのプレーに現れたということであろう。
今年3月から、今平は二人のトレーナーについてトレーニングと体調管理に努めてきた。その効果は「体幹と下半身が強化され、スウィング軸がぶれなくなった」というスウィングの安定に繋がっている。縛りを解き、余裕をもって伸び伸びとプレーするようになったことで4アンダーパーのトップ発進。2年連続賞金王は、「国内では一番勝ちたい試合」というナショナルオープン初優勝に向けて最高のスタートを切った。
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