「残念だし、悔しい」と谷原は、言葉を吐き捨てた。残念だったのは2位という結果。最終ラウンドの16番ホールまでは首位に立っていた。残り3ホールとなってから稲森に並ばれ、さらに逆転を許してしまった。
そして、「悔しい」といったのは、17、18番でミスしたショットに対する思いであった。並ばれることになった17番では、第2打を打つ前にグリーン周りの状況をしっかりと把握して「あそこだけはダメ」と左ガードバンカーが要チェックであることを再確認していた。不思議なことに、打ってはいけないところを意識すると、かえってそこに飛んで行ってしまうことがある。谷原の第2打は、まさにそれだった。距離のあるバンカーで、し
かもつま先下がり、左足上がりという難しい複合ライからピンを狙わなければならなかった。
「あそこにいったら、もはや寄せようがない。わかっていて、そこにいってしまった。なんとか寄せようとは思ったけど、結局どうにもならなかった。自分の責任ですよね」
このホールをボギーにして、稲森と並んで迎えた18番(パー5)。ドライバーショットでフェアウェイをとらえた後の第2打が、またもやミスショットとなった。「ピンまで110ヤード前後のエリアにレイアップするつもりだった」というが、6番アイアンのショットは、こすってしまって右のラフに。予定とは大幅に違う140ヤードほどの距離を、ラフから打たなければならなかった。しかもすぐ近くに枝が張り出してきていた。その下を狙っての9番アイアンの第3打は、狙い通りの弾道、方向でピンに向かったが、わずかに大きく、グリーンをこぼれてしまった。谷原の、この1打の後に打った稲森は、ピン横3メートルほどにつけてきた。勝負あった…のシーンではあった。
「あそこも自分のミスだった。どうして、あんなショットになったのかわからないけど、終盤の大事な場面で2回(17番の第2打と合わせて)もミスショットするなんて、ちょっと自分を許せない気持ちです。本当に、悔しい」
本選手権初優勝を目前にしての取りこぼしにホールアウト後も茫然としていた。これからのスケジュールについては「いくつか推薦をいただけそうなので、欧州ツアーに戻ることになると思います。それと、練習が必要でしょうね」
谷原が、プロ生活の集大成といえるようなゴルフを展開してくれることを願わずにはいられなかった。
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