S・ノリスは、キャディーをつとめる弟とラウンドしながらよく話し合う。仲がよいだけではない。どこを攻めるか。そのルートや、残り距離から判断する使用クラブなどについても、二人で話し、相談する。
「自分が、どのくらいの距離で度のクラブを手にするとピンに寄る確率はどのくらいか。弟は、自分にそんなデータも示してくれる。どういう状況でどんなミスが出やすいかも、しっかりとつかんでくれている。だから、こちらが迷いそうなときは、すかさず声をかけてくれるんだ」
第3日、静かなスタートを切った。4番まではパーを並べた。ここは「積極策は避けて、安全なところを狙って乗せておこう。意見が一致していた。難しいホ
ールがあるので、最善の策だと僕も思っていた」
5番パー3ホールは得意な距離を得意クラブで攻め、狙い通りに初バーディを奪う。ここからは積極的に攻めるゴルフでいい。二人の共通認識であった。そして、攻め続けて4連続バーディを奪った。思い通りのゴルフができたことでプレー、戦いを楽しんでもいた。前半を終え、インにターンするインターバルではノリスは弟にこんなことを話しかけていた。
「このゴルフが続けば、まだまだスコアを伸ばせる。2位に8打差ぐらいつけてホールアウトしようか」
そんな話をするほど、気持ちも盛り上がっていたということだ。さすがに、そこまでの差はつけられなかったが、終わってみれば、同スコアでスタートした池田勇太とは7打差、1打差だった小平には5打差をつけていた。独走である。
あとは、安全運転? 最終日に向けてそう水を向けられたノリスは大きく首を横に振った。
「いや、もっと伸ばすよ。どこまで伸ばせるのか。それを楽しみにしたいから」
勝利は、もう動かないのだろうか。
|