今大会第3ラウンドに進出したアマチュアは9人、その内アマチュアとして最後の日本オープン出場となる選手は、米澤蓮だけだった。米澤は、2018年ナショナルチーム入りを果し、国際試合での優勝はあるが、日本タイトルをまだ獲得していない。チームメイトである中島啓太は、今年日本アマチュア選手権に優勝して、日本タイトルホルダーになった。米澤とって、今大会は、最後の日本タイトル獲得のチャンスだった。
米澤は、昨日まで1オーバーパーで57位タイと、6アンダーパーでアマチュアトップの鈴木晃祐に大きく水をあけられ、ローアマチュア争いから脱落したと思われた。迎えた第4ラウンド、風と気温が昨日までとは全く異なるコ
ンディションに、多くの選手がスコアメイクに苦しむ中、米澤はノーボギーの3アンダーパー回り、通算2アンダーパーとし一気アマチュア勢の上位に浮上した。その後、鈴木晃祐をはじめアマチュア上位勢が次々とスコアを崩し、終わってみれば米澤蓮がセカンドローアマの岡田晃平に1打差でローアマタイトルを獲得した。
「アマチュア選手が活躍する中で、なかなか結果が残せないもどかしい毎日だったけれど、本調子ではない状態でも結果を残せたことは自信になったと思います。」と米澤。
その言葉の背景には、コロナ禍で自分のゴルフを見失いかけた苦悩の日々があった。
ナショナルチームに在籍すると、定期的に競技力の高い国際試合に参加し、自分の課題を明確にする機会を与えられる。帰国後、その課題と向き合い練習カリキュラムが組まれ、選手はそのカリキュラムに沿って日々練習に励み強くなる。米澤とって、海外での試合経験は、自分のゴルフを高める必要不可欠のプロセスであった。現に米澤は、ナショナルチームでの年数を重ねる毎に、海外試合で好成績を納め、それに比例して国内試合でも多くのタイトルを獲得し、ナショナルチームの主力選手にまで成長してきた。
新型コロナウィルスの影響により、海外派遣は全て中止となり、米澤はプロ転向を1年後に控え、自分のゴルフの成長基盤を失ってしまった。「海外試合が全て中止となってしまい、自分のゴルフを試すことができなくなり、取り組んでいる課題が正しいのか迷うことが多くなった。」と米澤は当時を振り返る。「変化を恐れずに、色々なことを自分のゴルフに取り入れて、良かったことと悪かったことを精査することが自分の成長につながると思ってゴルフに取り組んできました。」とローアマチュア獲得後のインタビューで答えた米澤。自分なりの成長手段の答えを見つけ出したコメントであった。
米澤が取り入れた大きな変化の一つは、今年から力を入れた肉体改造である。
米澤は、この1年で体重を10キロ近く増やし、トレーニングの頻度も増やして自分の体を一回り大きくした。肉体改造の効果は、ドライバーの飛距離となって現れる反面、アプローチショットなどのフィーリングに悪い変化ももたらす。変化の対応への試行錯誤が続き、米澤は、今年の日本アマチュア選手権や日本学生選手権などの日本タイトルのかかった試合で結果が伴わずさらに我慢を強いられた。
「プロは、いつも調子が良いわけではない。そんな中でも結果を出さなければならない厳しい世界。今回調子が良くないなりに、最後のチャンスでしっかり結果を出せたことは今後につながると思ってます。アマチュアとしていい締めくくりとなりました。」と笑顔で答える米澤。
我慢しながらも前を向き、自分のゴルフに向かってきたからこそ掴み取った悲願の日本タイトル。来年からは、プロのステージに立つ米澤にとって、日本タイトルよりも、苦悩の中から、身につけた「成長思考」の方が価値があるのかもしれない。
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