エージシュート。年齢を重ねていくと、誰もがエージシュートを狙いたくなる。自分の年齢か、それ以下のスコアで18ホールを回ればエージシュート達成になる。
伊藤正己は、2019年のノジマチャンピオンカップで、63歳のときに62で回って達成した選手である。これもすごい記録だ。そして、日本シニアオープン史上では、過去に2人の達成者がいる。2007年(熊本中央CC)大会では、当時65歳の青木功が、最終日65をマークして優勝している。2人目は、2017年(ザ・クラシック)大会の第1ラウンドで、当時68歳ぼ海老原清治が、68をマークして達成。今回の伊藤正己が65歳で65をマークして達成。3人目となる。
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レーを振り返ると「1番ホールで、チップインバーディを獲ったんです。ところが2番で、バーディチャンスを外して、まあ、今日のゴルフは、こんなもんなのかなって思いながらスタートしたわけです」ところが、3番で1メートルを沈め、5番で、2メートル弱を沈め、さらに9番、パー5でもバーディとし、前半を31で折り返した。
あれ? ひょっとしたら……。という気持ちが湧き出した。好事魔多しで、10番でボギーを叩き「あー、また終わったわ」と一端は、諦めかけた。圧巻は、11、12、13番の連続バーディ。「ショットが、今日は切れていたんですよ。11番は、2メートル半。12番は、もうOK距離。13番はm1メートルでしたから」
伊藤が「エージシュート」をしっかりと意識し始めたのは、ここからだった。当然、攻めるだけのゴルフではなくなっていく。その不安と期待感の狭間で揺れ動く心理は、長いながーい5ホールになったことだろう。
最終18番、パー5。ティショットは左に引っ掛けた。緊張の真っ只中だった。けれどもそこからのパーのとり方は、うまかった。伊藤が、所属コースで練習の虫と呼ばれるほどの努力が、ピンチを助けてくれたのだろう。2打目を着実にフェアウエイに出して、3打目は、ピン右横5メートルにつけて、2パットのパー。無口でシャイな伊藤の顔が、満面の笑顔に変わった瞬間だった。
「嬉しい。嬉しいです」という伊藤には、達成感が溢れていた。
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