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17Hティショット 申ジエ |
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17ティショット 吉田優利 |
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申ジエと吉田優利にとっては「魔の17番ホール」となってしまった。勝負の行方は、この17番で2人がスコアを落としたことで、勝みなみの優勝への道筋が濃厚になった。第3ラウンドを終えたとき、いみじくも吉田が「上もそうですが、下から攻めてくる選手もいますからね」と言ったとおりに、この日、通算1オーバーパーの3位タイでスタートした勝が、5バーディを奪って猛追してきた。前半で5つのバーディを奪って肉薄し、ついに14番が終了したときには、申ジエ、吉田優利、そして勝が、通算2アンダーパーで並んだ。ゲームの行方は、ここから誰が抜け出すかという三つ巴になった。
14番ティーイングエリアに申ジエが立ったときに
は、通算3アンダーパーで勝よりも1打リードしていた。ところが、フェアウェイからの第2打。バーディチャンスにつけられる位置から放った8番アイアンが、なんとグリーンオーバーしてしまったのだ。「グリーンの入り口に落としてピンに寄せていくイメージで打ったけれど、思った以上に飛んでしまったんです」と申ジエは言う。アドレナリンの影響なのか、どうかはわからない。そこで痛恨のボギー。残り5ホール。もちろん誰も諦めてはいない。むしろ、この3人は、勝負は、これからという意気込みだった。続く15番(パー3・186ヤード)。申ジエは、絶妙のショットをした。ティーマークから2クラブレングスをしっかりと測って、範囲内での後ろにティーアップした。自分の距離感に合わせたのである。そのショットが、ピン左横5メートルにつけてバーディチャンス。その距離を惜しくも外してパーとした。さらに16番でも、バーディチャンスの距離を外す。
吉田も苦戦していた。16番で痛恨のボギー。第2打をグリーン右やや奥の深いラフの斜面。バンカーとグリーンの間だった。そこからなんとか3メートルほどに寄せたけれども、入らずのボギーだった。
そしてふたりがやってきたのが、17番ホール。421ヤード、パー4である。
実は、吉田は、この17番を第1ラウンドから苦手としていた。最終ラウンドのデータで見ても、この日の平均スコアは、パー4に対して、4.406で、難易度は2番目に難しいホールとなっていた(ちなみに難易度1番は、14番で4.719)。「第1ラウンドから、どうも苦手なんですよね。立ちにくいですよ、私にとっては」と吉田は言う。そのティーショットが、左サイドにあるバンカーにはまってしまった。さらに、申ジエも、バンカーに入れた。ふたりは、ほぼ同じような場所だった。最初に、吉田が打つ。吉田のボールの位置は、グリーンを狙うにはアゴが高い。それでもアイアンでなんとかクリアしようと試みたが、結局、アゴにあたってラフの中。申ジエは、その吉田の位置よりも、ややフェアウェイ側にあった。バンカーの淵がラウンドしていて、吉田よりは高さがなかったけれど、それでもかなりの高さがあった。申ジエは、迷うことなく5番ウッドを手にした。グリップを短めに持った。「100パーセント、出ると思っていました」というショットは、無情にもアゴにあたってしまう。
ふたりが、ティーショットをするときには、グリーン上でどよめきが聴こえていた。それは、勝みなみがバーディを奪ったことを報せていた。その影響もあってか、申ジエは、果敢にもウッドを手にしたのかも知れない。いや世界で戦って来た彼女は、この場面でリスクを背負っても勝負に出なければ勝てないということを身にしみていたからかも知れない。
吉田は、この17番で、結局ダブルボギーを叩く。そして申ジエも、ボギーとしスコアを落とした。最終ホール。申ジエは、バーディをもぎ取って、1打差の2位となった。この1ストロークの差の価値の大きさを、彼女は十分理解している。
「でも、後悔はありません。自分のプレーは、決して悪くはなかったんです。だってイーブンパーで回ったんですからね。最善を尽くしたと思います」と語った。
申ジエと吉田優利が格闘した「魔の17番」。その17番で、素晴らしいバーディをもぎ取った勝みなみにとっては「女神がいる17番」となった。見応えのある勝負の分水嶺だった。
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