最終ラウンドに勝みなみは、大きく2度のガッツポーズを見せた。最初は10番ホールグリーンのエッジ部分でのことだった。第3打でもグリーンに乗せられず、ボールはエッジにこぼれていた。前半の9ホールで5バーディを奪い、この段階で最終組の申ジエとトップに並んでいた。後半にターンしてすぐにボギーにしたのでは、ちょっと勢いにブレーキがかかる。カップまでは8メートルほどもあっただろうか。下りのほんの僅か右に切れるラインだった。パターで丁寧にラインに乗せていった。手応えがあった。ボールが静かにカップに転がり込む前に右こぶしを突き上げた。
「せっかくの貯金を、まだ吐き出したくはなかったんです。後半になると、
もっと難しいホールが続くので、そこまでは貯金を切り崩したくないな…と思っていました。だから、ラインも慎重に読んで、カップインを狙いました。それが決まったので、“やったぁという気持ちがガッツポーズになりました」
そのあとは、満面の笑みだった。
二度目の大きなガッツポーズは17番のグリーン上であった。10番では会心のパーセーブをしていた勝も、13、14では連続ボギーを叩いていた。この時点では通算2アンダーパーへと後退したのだが、17番グリーンに上がるとき、スコアボードで申ジエも通算2アンダーパーに落としていることを知った。実は、この17番ホールで勝は勝負をかけていた。フェアウェイからの第2打でグリーン左にサイドに立つピンを狭いエリアから狙い打った。「17番が最終盤で最も難しいホールです。だから、ここでバーディをとれれば、大きなアドバンテージになると思いました。せっかくうまく作れたチャンスだから、“絶対に決めてやる”という気持ちでした。勝負にいけたこと、それがうまくいったこと。流れを作れました」
フックラインを読み切った。カップ真ん中から決まった。勝負所で決めたパットで優勝を手繰り寄せたという手応えもあり、無意識のうちにガッツポーズが出ていたのだった。
最終組の申ジエと吉田優利は、17番で大きく躓き、勝の読み通りの終盤の展開で、史上3人目の大会連覇達成者となった。
「無理はしないで、我慢するところは我慢する。それで自分でチャンスを作るべきホールは積極的に仕掛ける。私はそういうゴルフができていなかったのですけど、昨年の日本女子オープンの優勝をきっかけにできるようになったように思います。成長できたのかな…とも思います」
11月のUSLPGAツアーのQTに挑戦することを決め、申し込みも済ませている。通過すれば、畑岡奈紗や渋野日向子との黄金世代対決を今度は米国女子ツアーで再現させることになる。今後は最終戦まで日本での戦いを続け、全日程を終わらせてから渡米する予定。「あと1勝したいですね」ということで、それを手土産に米国に乗り込むつもりでいる。
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