蝉川泰果は、10番ホールからのスタートで、前半を31。そして後半も33の64でホールアウトし、6アンダーパーで首位に立った。
ボギーは、7番の1回だけだった。その蝉川は、スタート前に緊張感は、まったくなかったと言った。「緊張は、ありませんでした。打つ前に恐怖心が少なからずあるのでしょうけど、僕は、それを自覚する前に打ってしまいますからね。マインドとしては、まっすぐしかいかない、という気持ちで打ちます。ネガティブな要素は満たずに、いつもポジティブな気持ちでやっています」と付け加えた。21歳のアマチュアゴルファーが、ここまでメンタルを鍛えられたのは、いくつかの要因がある。
ひとつは、ナ
ショナルチームに入ってから、メンタル面をサポートしてくれる菅生貴之コーチのアドバイスである。ときに「助けてほしいなというときに連絡をとって」ズームで1時間ほど会話をすることがよくあるという。そして、もうひとつは2022年ABEMAツアーの「ジャパンクリエイトチャレンジ in 福岡雷山」で、史上5人目のアマチュア優勝したことだった。
「みなさん、パナソニックオープン(9月)で勝って自信がついたと思われがちですけど、ABEMAツアーでの優勝以来、全部勝ちに行けるという気持ちになったんですよ。それまでは、予選通過を意識してのゴルフ。その後は、勝ちにいくゴルフ。全然、意識は違ってきましたね」と語った。
「勝ちに行くイメージでプレーしている」と言った蝉川だけれども「やるからには負けたくない。優勝が目標だけれど、とらわれすぎないで、1打1打をしっかりとやり続けていくゴルフですね」と言う。深いラフ。そして硬くて速いグリーン。フェアウェイも決して広くない。コースセッティングは、ナショナルオープン仕様だ。ラフに苦しむ選手を横目に、蝉川は「ティーショットは、全部フェアウェイだったと思います」と言った。途中、記者が「5番は?」と聞かれて「あ、5番は、外しましたね(笑)」と言う。自分の中では、全部、フェアウェイにあった印象でプレーを終えていたのだろう。
12、14、16、18番と1ホールおきにバーディを奪った。それも、4メートル、約1メートル、4メートル、1メートル。パッティングもよく入った。折り返して、2番、4番、9番とバーディ。ボギーは、7番(パー3)だけだった。
「ドライバーを使ってのティーショットは、9ホールです。残り5ホールは、別のクラブでした」という蝉川の「刻む」という感覚が面白い。飛距離の問題だけでなく、落とし所のランディングエリアの面積だという。その中に置きに行くことが得策なのだ。コースマネジメントが明快で、刻むという表現よりも、置きに行くというのが相応しいかも知れない。
難度の高いセッティングに苦しむ選手もいれば、蝉川のように「こういうセッティングでも、自分らしさを忘れないでプレーできたのが、好スコアにつながっているのだと思います。まずは貯金ができたかな、という感じですね。でも、この先もいいスコアで回れそうなイメージがあるんですよ。明日も、もっといいスコアで回れれば、ですね。しっかり伸ばし合いをしていきたいです」と蝉川のポジティブシンキングには、微塵の揺るぎもない。さすが、心技体ともに世界アマチュアランキング1位の風格を感じだ。
|