金谷拓実は、囲み取材の中で、告白した。「(今年は特に)結果がでなくて、自暴自棄になりつつあったり…今年はいろんな経験をしているので、そういうのも乗り越えて」今週にたどり着き、36ホールを終えて比嘉一貴と並ぶ首位タイの通算6アンダーパーという位置までに至った。金谷にとって、生まれてはじめての辛い日々だったろう。17歳51日で日本アマを獲得。QTに挑戦したが思うような結果が出ずに東北福祉大学に進学。大学在学中のアマチュア時代に世界アマチュアランキング1位となり、マスターズにもアマチュア選手として出場。三井住友VISA太平洋マスターズでも優勝。翌2020年、プロ転向後にはダンロップフェニックスでは、
プロ初優勝するなど順風満帆の青春時代だった。ところが、世界へ、世界へと視野を向け戦っていく中で、初めてのどん底に落ちてしまったのである。
それをメディアや周囲は、スランプという言葉で括ってしまう。でも、本人にとっては、とてつもなく長い長い日々なのだ。「土日プレーするのも久々ですし、苦しい時間も今年は多かったので。今週はナショナルチームの時のコーチやスタッフと会って、いろんな話をして。今も支えてくれていて、結果が出なくても応援してくれているし、そういう人たちのためにも、今週頑張ります」と胸の内を語っていた。淡々と噛みしめるような一言一言だった。
36ホールを終えて、ボギーが、ひとつ。今日、第2ラウンドの7番だった。そして今日のバーディが3つ。2アンダーパーの68だった。第1ラウンドの4つのバーディと合わせて、7ホールのバーディ。1ホールのボギー。注目に値するのは、残りの28ホールのパーの数である。このパープレーの中に、きっとこの1年近くの辛い想いを乗り越えた重みが詰まっているのだろうと想いたい。
艱難辛苦(かんなんしんく)は、汝を珠(たま)にするという古くからの言葉がある。苦労を乗り越えて手にする栄光、人間性を意味するけれど、少なくとも、この2日間の金谷にとっては、この言葉が似合うと思うのだ。
「今日はほんとにピンポジションが難しくて、大変な位置ばかりだったので、ボギーは打ちましたけど、一つだけで抑えられたのは良いプレーだったかなと思います。
8番、12番、難しいホールをうまくパープレーでかわしたことに関して「12番は、ティーショットをミスしてしまったり、8番は良いポジションに運べたり、今週は本当に難しいコースだし、コンディションも難しいので、いかに我慢強くできるかが大事になってくると思います。この2日間は、良いパーセーブもあったし、ボギーを1つで抑えられているっていうのは良いプレーだと思うので、残り2日間自分らしいプレーをして、優勝を目指して頑張ります」と金谷は、語った。
最後に、金谷は「ともかく、自分らしいプレーを続けて、1打1打集中してやっていくだけです」と締めくくった。そう、金谷拓実は、彷徨う自分ではなく、自分らしさをふんだんに出し切って結果を待てば、きっと次へ向かう光明を見いだせるに違いない。
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