田村尚之は「今年が最後のシニアツアーになるかなぁ」と年始めに思っていた。
もともと身体は強靭ではなく、むしろ弱いタイプ。今年58歳になる田村にとっては、年々、きつい戦いが強いられる。本選手権でも、最年長者は72歳の高橋勝成。田村の年齢は、上から数えると26番目になる。
その限界を翻したきっかけが、今年始めて出場した全米シニアオープンゴルフ選手権だった。結果的には予選落ちしたものの「まだ僕でもやれるかも知れない。ショットの縦距離、横の精度など決して(米国など海外の選手に)劣っていないじゃないか、と感じたんですよ」と自信につながった。もう数年、頑張ってみようと思った瞬間だった。
帰国して、6
月のすまいーだカップで通算8アンダーパーの6位。スターツシニアでも通算8アンダーパーの14位。調子は悪くなかった。ところが8月に入って体調がおかしくなった。「うーん。何が原因でなったかわからないんですけど、気怠いし、体調が思わしくなかったんですよ」それからの3試合は、最悪だったという。
「実は、今週も火、水曜日の練習ラウンドは、まったくプレーしなかったんです。もちろん、それ以前に練習ラウンドはしていますが、今週は、その2日間は体調をしっかりと整えることに専念しました」と語った。
第1ラウンドが始まった。田村は自分自身の不安をよそに、10番からスタートして、5ホールをパープレー。そして、15、16番でバーディ、17番をボギーとしたあと、折返しで3、4、6番とバーディを奪った。通算4アンダーパーで終えて、首位に迫る順位で終えた。
「上出来です。ほんとに上出来だと思います。ここにくるまでの3試合が惨憺たるゴルフでしたからね。まさか、と思うゴルフでした」と語った。ショットが冴えていた。「このコースは、ラフに入れたら、80も叩くぐらいのスコアにすぐになりますから。今日は、それもなく、アイアンショットもよく打てていました。ミスらしいミスは、7番でフェアウエイから残り150ヤードを、ちょっと引っ掛けたぐらいです。ショットであまり保険をかけるような場面がありませんでしたからね」と明るい表情で言った。保険をかけるというのは、不安があって、本来攻めるべきルートを避けて安全策をとるということなのだ。それをしなかったほどショットが冴えていたということだ。
「でも、明日はわかりません。今日はほんとに上出来。明日がこうなるとは限りませんからね」と慎重な心持ちでいる。相変わらず、体を整えるために毎日、ラウンドを終えるストレッチなどのマッサージに通っている。「今日も、京都まで施術にいくんですよ」と足早にコースを去っていった。田村の積み重ねる努力は、まだまだ選手寿命を長く保ってくれるはずだ。
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