阿原久夫は、51歳のシニアルーキーと言ってもいい世代だ。本選手権では、50歳から55歳のルーキーゾーンの選手が、なんと78人もいる。出場全選手が126名。つまり圧倒的に50代前半の選手で占めていることになる。ちなみに70歳以上が、2名。60歳以上が、22名という分布である。
阿原のキャリアは、学生ゴルフからレギュラーツアーを目指したけれど、チャンスに恵まれずに地元広島の「Golf ZONE Hesaka」でレッスンをしながら生計を立てている。その阿原が、シニアツアーに参加したのが2021年。いきなりファンケルクラシックで田村尚之とプレーオフで争い、2位となっている。それでも、阿原は、シニアル
ーキーとして先輩のゴルフを盗もうと必死である。
第1ラウンドは、10番ホールからのスタートだった。すると、いきなりイーグル、11番でバーディと猛烈な発進だ。「11番は、ラッキーの一言に尽きます。風にのって飛んだボールは、第2打でグリーンの奥。ピンまで15ヤードほどが、入っちゃったんですよ。さらに11番も、なんで入っちゃった(1パット)のかなぁ、よくわからないんですけど、バーディ。今日のゴルフ、よかったときの内容って、あまり覚えていないんですよね(笑)。悪い場面は、しっかりと覚えているのに」と、うわずった声で、喋っていた。
4ホールを終えて、4アンダーパー。続く14番でボギーを叩いた。そのとき阿原は、冷静だった。「このボギーが流れをどう変えるかだと思ったんです。悪い流れになるか、逆にいい流れが続くか」と思っていたら、その後、バーディ、バーディ、パー、バーディで、なんと6アンダーパー、30で、後半へ向かっていったのである。
30というスコアは、何度か経験があると言った。「普通の試合ではないラウンドで27を出したこともあるんですよ」と爆発力のあるゴルフを思わせた。
いつだったか阿原が、篠崎紀夫プロからアドバイスを貰ったことがある。それは、がむしゃらになりすぎてリズムを崩すことが、しばしばあったときだ。「どうしたらいいんですか? と聞いたら、呼吸法を覚えれば、と言われました」それも収穫だったという。
後半、1番でバーディ。そこから5ホールはパー。そしてボギー、バーディとして、1アンダーパー。通算7アンダーパーで第1ラウンドを終え、首位に立った。
「まだ4分の1(残り54ホール)が終わったばかりですからね。みなさん、ここに来ている先輩の方々は、いくらでも、ビッグスコアが出せる人たちばかりですから。僕が立ち向かえるのは、体力勝負しかないんですかね(笑)」と51歳の阿原が明るい表情で語っていた。
「先週のコマツオープンで、パッティングの調子が悪かったので、昔使っていたボロボロのパターを取り出したんです。傷ついたパターなんですけど、むしろ僕には合っているかなと思って使っているのですが、これが入ってくれているんですね。2003年まで20年間つかっていた相棒だったんです。」
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