「4日間(72ホール)を考えたら、切れるわけにはいかない」といった寺西明のコメントは、含蓄があった。アマチュアゴルファーでも、辛抱、我慢するゴルフやバッドラックのときに、切れてしまいたくなる。でも、切れれば、18ホール、ましてやトーナメントの72ホールを戦い続けるわけにはいかないからだ。
2番(410ヤード・パー4)で、寺西は、ボギーを覚悟するような場面から、逆にバーディが獲れた。そういう運もあったけれど、そこからはイライラのホールが4ホール続いた。パッティングだった。うまく入らない。入りそうで曲がる。曲者グリーンと格闘していた。イライラが、爆発寸前になって7番をボギーとして「ここで切れるわ
けにはいかない」と心に鞭を打った。8番でバーディを奪って、前半を1アンダーでパー折り返した。10番(パー5)でバーディ。そこから再び、心の格闘が続いた。
さすがに百戦錬磨の寺西である。10番をバーディとしたあと、残り8ホールでずっとパーが続くゴルフを、何事もないようにやってのけた。もちろん、外側から見れば、の話だけれど、心の葛藤は、大変なものだったはずだ。
「パッティングが、決まってくれませんでした、でも、まだ初日ですからね」とサラリ言ってのけた。72ホール、4日間のチャンピオンシップで戦う選手たち。上位で優勝争いをしてくる選手は、第1ラウンドよりも第2ラウンド、第2ラウンドよりも第3ラウンドと、日に日に学習能力と感性で、タッチを合わせて、最終ラウンドに最高のタッチにしてくる、と言われている。
寺西は、きっとそれを理解している。だからこそ、第1ラウンドで切れるなんてことはできない、いや、してはならないことを承知しているのだ。それを期待したい。
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