「アンダーパーで回った自分が、信じられない」と藤田寛之は言った。それほどショットが乱れ、手強い、状況的に難しい場面でのショットを強いられた。それを18ホール回り終えて、気分的には、もっといっぱい叩いた感覚だったのだろう。「特に、ドライバーですね。まったくうまく行きませんでした。印象としては、ほとんどラフに入っていた感じですよ」という。手堅いという印象が強い藤田が、これほどドライバーショットに対しての乱れを表現するのは、珍しい。「そう見えるでしょうけど、今日は、左からの風だけでなく、どこからの風も全部ダメだったですね。最後は、なにをどうしていいのか、わからなくなっちゃいました」と本音を吐いた。フ
ェードヒッターだから、左からの風には、敏感だ。でも、めまぐるしくホールごとに変わる風の方向に、ドライバーショットをアジャストすることができなかったという。「いまの道具は、オートマチックでしょう。それは素晴らしいんですけど、こういう状況で、どうボールをコントロールさせていくかという場面で、解らなく(難しく)なっちゃうんですね。操ろうとして失敗しちゃったのかな」と、テクニックを持っているからこその悩みでもあった。
2番でボギーのあと、9番のバーディまで、ずっとスコアが動かなかった。その6ホールのパーの中で、2メートルのパーパットを入れるナイスパーもあれば、長い距離のスーパーパットもあった。「スタートして、ドライバーショットが決まらないと感じたときに、今日1日、苦労するなと思っていました。でも、このスコアで回れたのは、運でゴルフをしていたようなもんですよ」前半を36でターンして、後半も、ショットの乱れは続いていた。14番でボギー。首位を走るマークセンとは2打差となる。けれども、藤田のしぶとさ、粘り強さ、執念深さ、いや熱意が16、17番のバーディにつながったといえる。
「特に、17番(パー3の第1打)は、今日イチのショットでした。6番アイアンでしたけど、ああいうショットが、後にも先にも、1つもなかったですね」と語る。そのショットの前に、キャディとスウィングの話をしていた。「ちょっとあおり気味かなぁって。風が正面からのアゲンストでえ抑え気味に打ったのがうまくいきました」首位、マークセンとは、1打差で最終ラウンドを迎える。そのマークセンのゴルフについて訊くと「うーん。横綱かなぁ。まったく隙きがない。スターツで一緒に回ったときは、ミスもあったけれど、今回は、素晴らしいフェードボールでドライバーを放ってフェアウェイに落とすし、アイアンショットのコントロールも素晴らしい。正直、付け入る隙きがない。でも、ゴルフって、いつどうなるのかわからないゲームですからね」だから、どうであっても戦える。逆転だってありうる。藤田のシニアの目標は、世界のシニアメジャーで戦うことだ。そういう深謀遠慮があるから、粘り強いゴルフができるのだと思う。
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