兼本貴司は寺西明とふたりでこの日のベストスコア68で、3位につけた。もちろん60台でプレーし終えたのは、この2人だけである。パープレー・アンダーパーで回った選手も62人中17人しかいなかった。それほど過酷な条件下でのプレー。だから68をマークした兼本も「こんなゴルフができるとは、思ってもみなかったですね」と興奮気味に語っていた。スタートが濃霧と雨の影響で、およそ1時間遅れた。「どうなるんだろうと思っていたんですよ。通さ2アンダーパー、6位スタートでしたから、上を目指すしかない緊張感もありましたしね」と不安と緊張の中でスタートしたという。1番から5番までパープレーが続いた。兼本は「計測器では、最大飛距離300ヤード」の飛ばし屋である。6番(パー4)で6メートルを沈めてバーディ。続く、7番も6メートル。さらに8番も1メートルを入れてバーディ。9番では、3パットのボギーとしたものの、前半で2つ縮めた。飛ばし屋の兼本だけれど、ドライバーを使うホールは、前半でも2ホールぐらいしかなかったという。さらに10番も2メートルを入れてバーディ。「11番から15番までは、風が読みきれませんでしたね。ほんと、わかりにくい風が吹くホールが続くんですよ」と言った。16番(パー5)。残り210ヤードを5番アイアンで2オン。残り10メートルを2パットのバーディとした。
「春先に、のじまチャンピオンシップで優勝したんですよ。55歳までにシニア1勝を目標にしていたんですけど、まさかこんなに早く(51歳)勝てるとは思っていなかったんです。でも、その後が、ちょっと調子を崩して、ファンケルクラシックで3位ぐらいで、先週のコマツオープンも26位タイといまいちだったんです。ですから、この3位は、とても嬉しい」と素直に喜んでいた。優勝争いは、飛び抜けたマークセンと藤田の争いとなっていたけれど、別の視点から見れば、3位以下は、違った熾烈な争いだった。深堀圭一郎、山添昌良、宮本勝昌たちの選手が、1打1打に一喜一憂する緊迫感があった。兼本は、そこからベストスコアを出して、するりと抜け出したことになる。いみじくも2位になった藤田寛之が、ポツリとマークセンとの戦いだけでなく「下の(3位以下)選手も迫ってきましたから意識しました」というほどに兼本の68は、藤田にもプレッシャーをかけたことになる。
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