全選手のホールバイホールを見ると、ノーボギーで18ホールを回り終えた選手は、ひとりもいなかった。そればかりか、この日は、アルバトロスからダブルパーまでがでた。アルバトロスは、吉田泰基で、2番(537ヤード・パー5)で、残り258ヤードからを5番ウッドで放ったボールが入ってしまった。
スコアは「2」である。ちなみに日本オープンの歴史の中では、2018年大会の杉山知靖以来である。ダブルパーは、永松宏之が、11番(481ヤード・パー4)で「8」を叩いてしまった。スコアが、これだけ幅のあるものになるのも珍しい。ナショナルオープンでは、なるべくボギーを叩かないというのが鉄則と言われるけれど、なかな
かそうはいかないのも事実である。ただそのボギーのあとに、どう自分のゴルフを立て直せるかがゲームも妙であって、そのままズルズルと崩れてしまう選手から、それを機に逆にいい流れになることもある。
中島啓太は、まずボギーを叩かないゴルフを考えていた。でも、現実は出だしの1番からいきなりボギー。そしてずっとパープレーを続けたけれど、8番でもボギー。自分の中では「ボギーは仕方ないにしても連続ボギーは絶対に避けたい」と思っていた。そんな“もやもや”を払拭したのが、9番でのバーディだった。「それまでいい流れではなかったものを、そこで少し落ち着けた」と言った。ところがボギーがまたやってきた。12番(パー4)でなんと3パットのボギーだった。普通なら、そこでカッとなったり、悔いを残しながらのプレーになりがちだ。後悔の念が必ずあるはずだ。けれども、この日の中島の心境は違っていた。「なんか緊張がほどけて、いい意識になったんですよね。心に余裕がなかったものが、ほどよい具合にポジティブになれたんですよ。ちょうど、12番でボギーを叩いて、次の13番まで少しインターバル(歩く距離)があったので、そういう気持ちになれました」と語った。勝ちたいと思う気持ちが強すぎたり、もっといい結果を出したいという気持ちなど、選手たちは当然のように集中する。その集中が極度になると、悪い方向にいけば、緊張感が高まり過ぎてしまうのだろう。
続く13番(502ヤード・パー4)で残り142ヤードからのショットを1メートルに寄せて、バーディ。さらに、15、16番とバーディを奪って、この日1アンダーパー。通算、4アンダーパーで首位タイとなった。「価値ある1アンダーパーだと思います」と中島は胸を張った。明日からは、2サムで成績順に回る。「最終ラウンドは、天候も悪くなるという予報で、明日の3日目にスコアをできるだけ伸ばしていくという考え方もありますけど、自分としては、最後の5ホール勝負かなと。僕は、試合(ゲーム)を客観的に見るタイプなんです。全体像があって自分のゴルフだと。だから、あまり入り込みすぎずにやっていきたいと思っています」と、中島の冷静沈着ぶりを語ってくれた。でも、実は、内心は燃えたぎる闘争心を持ち合わせているがゆえの客観視だと思っている。3日目の最後の5ホールが見逃せない。
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