ドライバーを振り抜いたらチラッと打球に目をやって、すぐにティーを拾う。打球の落下地点を確認するまでもなく、約束されたようにボールはフェアウェイをとらえている。稲森佑貴のスタイルである。フェアウェイキープ率は79・740%で今シーズンもいまや定位置と言えるトップの座についている。ラフが深く、ティーショットを曲げるとパワーを誇る選手でも苦戦させられる難コース。稲森の第2ラウンド、フェアウェイを外したのは2ホールだけだった。
「自分は爆発力のある選手ではないので、フェアウェイキープはゴルフを組み立てていく上で絶対条件だし、スコアメイクの生命線になります」グリーンを外しても、すぐ横にボールがある
。寄せて1パットのパーセーブは、稲森にとって容易いことに思える。そして、目の色を変えることもなく、淡々とホールを重ねていく。
最も楽にゴルフをしている選手。そんな印象を受ける。バーディも2番(パー5)と14番(パー3)の2ホール。「全部パーでもいいと思ってプレーしている。そうはいっても、ボギーを覚悟しなければならないホールもあれば、状況もあるから、出来る限り出入りの少ないゴルフというのが、自分のペースでしょうね」。
そう、今大会も、稲森ペースで試合の流れができている。
ホールアウト後、報道陣のインタビュー前に、「日没が近づいているので、先に練習場へ行かせていただきます」と断りをいれて、ドライビングレンジに足を運んだ。実はフェアウェイをはずしてバンカーに打ち込んだ2度のショットが気がかりだったというのだ。ほんのちょっとしたことなのだろうが、それでも確認せずにはいられなかったのだ。自分のゴルフに綻びがでることを許さないかたくなな姿勢が、うかがえた。
|