若くて強くて上手い選手が続々と誕生してくる日本の男子ゴルフツアー。第3ラウンドに単独トップに立ったのは平本世中だった。専修大学出身で2021年12月プロ転向というヤングガンである。日本オープンへの出場は昨年に続いて2度目になる。いずれも予選会を突破しての出場権獲得だ。昨年大会の第3ラウンドに「貴重な経験」をしている。アダム・スコットとのラウンドだった。
「拙い英語なんですけど、聞いてみたいことがあったのです。僕は、けっこう緊張しいなんで、そんなときスコット選手は、どんなことを心掛けてプレーをしているのかを教えてもらいたかったのです。“緊張するのは当たり前。私も緊張する。でも、それが普通で、特
別なことではない。そう思っている”というのが答えでした。そうか、緊張するのが普通の状態で、その中で自分のプレーをすればいいのか…と、疑問が解けました」。
今季は、この日本オープンがレギュラーツアー8試合目の出場となる。これまでの7試合でのベストフィニッシュはJAPANプレーヤーズ選手権の10位タイで予選落ちが4回ある。「自分にとって、これが今シーズン最後の試合なので、頑張りたいと思っていました」。ちなみに、ABEMAツアーでは優勝こそないものの2位タイの試合が3回あり、同ツアーの賞金ランキング4位につけている。来シーズンは、レギュラーツアーでの出場が、今年よりも大幅に増えそうなところにいる。
さて、日本オープンの第3ラウンドである。1アンダーパーからのスタートでティーイングエリアでは、昨年、スコットに聞いた話を頭に浮かべていた。“緊張するのは、当たり前”ということで悪いことじゃない。その中で自分のプレーに徹すればいい」。そして、この日の流れを考えていた。1、2番のどちらか、もしくは連続バーディでその後のゴルフを楽にしていく。ボギーのピンチを迎えたら、ボギーにすればいい。無理してダブルボギーという最悪の結果にはしない。1番でフェアウェイからのピッチングウェッジでの第2打を1.5メートルにつけてバーディ発進できた。2番(パー5)はパーにとどまったが、5番(パー3)で2個目のバーディ。このとき平本は、また別のことを考えていた。
「今日は、いつも以上にリズムがいいし、タイミングも合っているから、もう少し攻めていってもいいのかもしれない」。リスク回避を考えるよりも、積極的に攻める。そのゴルフが、その後の5バーディ・2ボギーにつながって、第3ラウンドのスコアは5アンダーパーの65となり、通算6アンダーパーで単独トップへと押し上げた。
「明日はもっと緊張するかもしれませんが、それも当然と受け止めて、その中で自分のプレーをしていきたいと思います」。
緊張はあっても、気負いはない。このゴルフが続けば、平本の大金星も夢ではない。
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