松山英樹、アダム・スコット、そして石川遼のゴールデンペアリングの3人が、練習グリーンでパッティング練習をしている頃には、スタートホールとなる1番ホールを、まさにぐるりとギャラリーが囲んでしまっていた。二重三重どころではない。埋め尽くすという表現が、現実の光景だった。
そして、練習グリーンから1番ホールのティーインググラウンドへ向かって、最初に歩き出したのが、松山英樹だった。割れんばかりの拍手。日本の男子トーナメントの第1ラウンドで、これだけの拍手で選手を迎えたことがあっただろうか。アダム、石川が続いて歩いてきたときも、その拍手は止むことがなかった。
待ち焦がれていたぞ、松山!という期待感に
溢れていた。「ホントに驚きましたよね。緊張しました(笑)」と松山から冗談半分にせよ、そういうコメントが出るほどの光景だったのである。その余韻が、ずっと18ホール続いていた。
松山は、振り返る。「そうですね。(内容は)良くないですけど、今日のスコア以上に打たなくて済んだので良かったと思います。見ている人には、いいプレーができなくて申し訳ない気持ちがありますけど、スコア的には大崩れせずに済んだので……。こういう組み合わせになると、たくさんのお客さんが来てくれるのは、ほんとに嬉しく思います。それは僕1人だけの力じゃこんなにたくさんの人を呼べないと思いますし、遼やアダムも含めて男子プロみんなが呼んでいるのかなと思います」と言った。松山らしい謙虚さだった。
松山英樹は、実は、今日の自分のゴルフに満足していない。いやきっとツアーで戦う選手たちにとって、満足という言葉は、ほとんどないのかも知れない。あてのないイバラの道のりのように、常に、いま以上、もっともっとという気持ちが強いのだろう。ホールアウトしたあとの記者会見で、松山は「凄く悪かったわけではないけれど、もうちょっとできたかなと思います。でも、こうやってボギーを極力少なくして、じっと耐えるのも大切ですからね。ショートゲームで踏ん張れたと思います。(パッティングも)感覚はさほど良くないですけど、こういうセッティングだったら、やっぱり入ることがいちばんスコアに繋がると思いますし、気分良く次のホールに行けたので、そういう意味では、(きわどいパーパットが)入ってくれたので良かったと思います」と話を続けた。
松山の大いなる成長が、ここにあると思う。抜群にショートゲームのスキルが上がった。バンカーショット、難しいさまざまなライからの寄せなど、随所に、松山の成長を見ることができたし、パッティングにしても、不安感のないストロークの潔さが光った。
第1ラウンドを終えて、首位とは5打差。「あんまり考えないようにしています。自分のベストを尽くした結果が、戦い(優勝争い)に繋がると思っています。まあ、今日は、本当に自分は全力を出せたとおもいますし、明日からも1打でも無駄にしないようにしたいと思っています」
ゴルフゲームに対する姿勢の成長ぶりが、鮮明に見て取れた。
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