練習ラウンドを回って、矢野東は、ひとつの結論を出した。「考えても、悩んでも、どう細工しても、このコースセッティングでフェアウェイをキープするのは、難しいと思ったんですよ。だって僕の技量じゃ、無理だもの。そう思って、ならばそれをネガティブに考えるのではなく、むしろ、何も考えずに、何も(小細工)しないで、シンプルに、ただ狙い所を決めて、フェアウェイに向かって、振ってやろうと思ったら、逆に、うまくフェアウェイをキープしてくれたんですね」と語った。
スタート前も、なんのためらいもなかった。迷いもなかった。昨日決めたことを、そのまま動揺も迷いもせずに実行できた。1番で、フェアウェイをキープしてバーディ
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。これでいい。前半でフェアウェイを外したホールは、わずかに2つだった。「ラフに入ったら、出して3打目を1ピンに寄せられたら、パーもチャンスがある。ボギーでも仕方ない」というごくごく単純な思考回路に変えてプレーいたという。
前半は、1、8、9番でバーディ。7番ボギーで折り返した。
「少なくとも、14番まででフェアウェイを外したのは2回。いい結果になりましたよ」と振り返る。
「こういうコースセッティングは、自分にとって(技量が)精いっぱいすぎます。いい意味で開き直れたことが良かったと思います。曲がってもいいから振り切る。フェアウェイしかみないということが、このスコアになったのだと思うんですよね」と明るい表情で語った。
15番でボギーを叩いた後、17番でバーディを奪って、この時点で4アンダーパーとなり、首位のH・W・リューと並んだ。最終組の一組前を回っている矢野のグループは、18番グリーンにやってくると微かにボールが見えるという状態だった。「(先週、最終ラウンドのプレーオフで翌日まで延びた)勇太が言っていたことがよくわかったよ。ほんとにラインが見えなくなるんですよね。2メートル。スライスラインだとメモしていたんですが、やっぱり読みきれずに真っ直ぐ打って外してのボギーでした」
この日の矢野は、そう言いながらもネガティブな発言や表情をしていなかった。それは、自分がどう攻めていくか、どういう精神状態で18ホール回れるかということを、しっかりと決めて、それが達成できたからだ。
「え?明日ですか?そんな展望もなにもありませんよ。もしフェアウェイを外すことが多ければ、それでとんでもないスコアになるわけだし、4日間を読むなんてことは、このコースセッティングでは、無理というものです。ともかく、今日のようなプレー。シンプルに、考えすぎず、小細工せず、空っぽの状態で構えてフェアウェイに向かって打つだけです」
このシンプル、居直り、勇気、決断を持ってプレーすることが、実は、なかなか難しいのである。矢野東は、それを第1ラウンドにやってのけた。
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