松山英樹の、9番から13番までの5ホール連続バーディの快進撃。その兆候を感じたのは「1番のセカンドショットと2番のティーショットを打ち終えたときですね。あ、今日はうまくいけてるな」と言った。まずは、2番でバーディ。前半は、9番のバーディで1アンダーパーとするまで、ずっとスコアカード通りのプレー。それでも松山は「リラックスして、できているな」という感覚だったという。無理をしない。それでいて手を抜くわけでもないし、手綱を緩めるわけでもない。もちろんチャンスがあれば、バーディを奪う。でも、である。そう感じた時点は、この日の前半。トーナメントのゲームとしては、36ホールを終えて、45ホール目に向かって
いく途中なのである。4日間72ホールのゲームと考えれば、むしろこれから、勝利に向かってまとめ上げていく道のりなのだ。
「前半からいいショットが出ていたので、噛み合えばいいスコアが出る」と確信に変わったのが、9番のバーディだった。そこからの5連続バーディは、まさに圧巻だ。「前半はリラックスできていて、後半は、いい緊張感の中でプレーできました」という松山の言葉は、スイッチが入った。あるいは、ギアチャンジができたことを指すのだと思う。
13番(341ヤード、パー4)。このホールは、ワンオン、もしくはグリーン周りまでティーショットで運んでいける。もちろんリスクもある。松山は、当然、狙っていった。そのボールは、グリーン手前の目的外グリーンの右。傾斜(つま先下がり)の逆目の深いラフ。ピンまで25ヤード。ここで目を見張るのは、打つ前の素振りだった。ボールが止まっている深いラフと似たようなライを探して、そこで素振り。2,3度場所を変えて、およそ10回も素振りをしただろうか。これは、ほんとに難度の高いショットが要求されるはずだ。松山は、そこからのアプローチを2メートルに寄せて、バーディを奪った。
「そうですね。ライ的には簡単じゃなかったけれど、エッジからピンまでが少し離れていたので上手くグリーンに乗せればなんとかなりそうと思って打ちました」と、いとも簡単に答えた。
続く14番(432ヤード、パー4)でもピンチが来た。ティーショットを右に曲げて林の中。そこからグリーンを狙うには、手前の木々が邪魔をする。松山は、そこで考えたあげくに6番アイアンでカット(スライスめ)して脱出することにした。そこの狙いと決断が潔い。
「あそこは(ショット的にグリーン左サイドの)バンカーまで持っていくのが大変だったし、横にだすかと思ったけれど、狙っていってバンカーに入ればいいなと思ったので、そっちを選びました」と解説してくれた。
絶妙なバンカーショットでパーを死守した。
「アイアンショットがだいぶ良くなってきているし、もし(明日悪くなっても)悪いなりにまとめられるように、よければそれなりにやりたいと思っています」と松山らしいコメントだった。
ずっと見ていて、第1ラウンド、そして昨日のゴルフ、さらに第3ラウンドのゴルフをギアのチェンジの仕方が実にうまいと思う。無理せず、悪いところを修正しながら、18ホール、そして18ホールと積み上げていく。それは、トーナメントが、72ホールで完結するということを、身をもって感じているからだろう。徐々に、徐々に、全力疾走せずに、最初は余力と修正にいそしみながら、加速度をあげて加速していく松山のゴルフは、やっぱり世界ランキング上位、米ツアーで優勝争いができる成長を証明してくれたと思う。
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