「今日は、丁寧にプレーすることを心がけました」と室田は、語った。3バーディ・ノーボギー。69のスコアだった。丁寧に、という言葉の裏には、実は、忍耐力、判断力、技量、そして押し引きの機微など、複雑なゴルフゲームの内面が秘められている。「出だしから5番ホールまで、(バーディ)チャンスが何度かあったんですよ」それでも、無理せず3パットのボギーを防ぎながら、しっかりとパープレーをベースに攻めていった。
6番で、上り5メートルのバーディパットを沈めて、さらに9番(パー5)で「グリーンの右サイドの淵から7メートルほどの距離を沈めて、おまけのバーディ」を奪った。おまけという表現は、丁寧なプレーを続けたご褒
美だったのだろう。
本選手権は、バーディ合戦の戦いではなく、シビアなコースセッティング、ホールロケーションでの戦いでは、ボギー、ダブルボギーを叩いてスコアを崩さない。そんな中で、バーディを奪っていくという戦いだ。だから室田は丁寧なゴルフを決意したのだろう。
後半に入って、13番でバーディ。幾度かのチャンスとピンチを切り抜けて丁寧なプレーをやり遂げた。
「それにしても」と室田が感心するのは、同じ組でプレーしたマークセンのことだった。「見た?あの17番のバンカーショット。あれはなかなかできるもんじゃない」と言った。マークセンの17番のバンカーは、第2打をグリーン左サイド手前のバンカーに入れたときのバンカーショットのシーンである。ピンまでおよそ30ヤード。バンカーのアゴも高い。その場面で、マークセンは、ほぼフルショットで、高いボールを放ち、キュッキュッとピンに寄せた。
「あの決断と勇気。凄いよね。世界の難しいコースで戦っていないと、あんな勇気とショットはできない。怯んじゃうもの、普通なら。それを大事な場面で、逃げることなく攻めていく。人間がタフなんですよ。そういうシニアルーキーがやってきたんだから、負けていられないでしょう!」キング・オブ・シニアの心に、新たな闘志を沸かせたのは、マークセンだった。残り2日間、二人の熾烈な戦いは、見逃せない。
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