6バーディ・3ボギーの67。首位と2打差の2位と好スタートを切った川岸は、「いろいろあったけど、楽しく、ラッキーな1日だった」と、第1ラウンドの18ホールを振り返って語った。
「ドライバーショットの調子が悪かったのに、木にあたってフェアウェイに戻ってきたり、長いパットが入ったりしてバーディがたくさんとれたし、ダブルボギーは1ホールもなかった。ちょっと自分じゃないみたいな感じもするけど、本当にいい1日だった」
木に当たってフェアフェイに戻ってきたのは16番(パー4)。林の中に飛び込んでいきそうなミスショットだったが、木に当たって戻ってきた。「このコースは、林に打ち込んでしまったら、すぐにダブ
ルボギーになってしまう。それが跳ね返って戻ってきて…。グリーンまでは遠くなってボギーにはなったけど、これはナイスボギーといってもいい結果だったね」
ラッキーといえば、アウトにターンしてからの7番(パー5)では、こんなシーンがあった。第2打で「狙って入れた」というグリーン手前バンカー。ここまでは計算通りだった。ところが「寄せやすい」と考えていたバンカーショットがハーフトップ気味に飛び出し、グリーン奥のカラー部分にまで転がってしまった。ピンまで8メートル。このパットがコロリとカップに転がり込んでのバーディであった。
シニア入り前からジャンボ邸の練習場に足繁く通い、ドライバーショットを中心に打ち込んできた。でも、レギュラーツアーから続く不振からは抜け出せないでいた。「ジャンボさんからは30年も前から“お前は、右手、右腕が固いなぁ…”といわれていたけど、ダウンスウィングへの切り返しで、どうしても力が入ってしまう。どうすれば、力を抜くことができるのか。いろいろ試してきたけど、どうにもならなかった。それが、不思議なことに、ここ2年ほど、切り返しで脱力できるようになった。どうしたのか自分ではわからなかったけど、ジャンボさんにまた言われたことがある。“それは、力が抜けるようになったのじゃなく、力が無くなってきたんだよ”って。でも、それで良いタイミングで振れるようになったんだったら、それもまたラッキーだよね」。
プラス思考になったというが、これもまた、その表れといえよう。
「レギュラー時代には苦しいことの方が多かったけど、シニア入りした今は、本当にゴルフが楽しい。幸せだと思うようになったもの」
コロナ禍で自宅にいることが多くなったが、この時間も楽しめるように生活習慣を変えたという。「食事も、簡単なものは自分で作るようになったし、家の中で素振りやパッティング練習をするようにもなった。この僕が…ですよ。ゴルフばかりじゃなく、人生が楽しくなってきている」
日本シニアオープンでは、密かに心に期していることがある。それは娘の女子プロ・史果に優勝するところを見せたいという思いだ。トラウマになっていることがある。まだ史果プロがジュニアだったとき、応援に駆けつけて「優勝しろ!」とゲキを飛ばしたところ「じゃあ、手本を見せてよ」と切り返されてしまった。プロになり、アドバイスしようにも聞く耳を持ってくれない。「勝てない人のアドバイスなんて有難くもない」とにべもない反応だというのだ。
「だから、シニアオープンに勝てば、ちょっとは聞いてくれるんじゃないか、と思っているんです」
川岸は楽しくなったというゴルフとは別に、父・娘の仲も楽しめるようにしたいと願っているのだった。
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