前半の10番からの9ホールは、ボギーなしの3バーディを奪い快調にスコアを伸ばしたのが藤田寛之。ピンチらしいピンチはなく、決めるべきパットを決めて、藤田にとっては「当たり前」のゴルフを展開した。
後半にターンしてからは静かにパーを続けていた。鳴尾ゴルフ倶楽部のワナを避け、大ケガをしないようにという慎重で丁寧なプレーぶりだった。6番でバンカーから2メートルに寄せたパットを外して、この日初ボギーにしたが、続く7番(パー5)でバウンスバックのバーディを決めた。トラブルに見舞われたのは、8番ホールだった。
ティーショットが、やや右で、ラフ方向に飛び出した。このボールがさらに右に大きく跳ねていった。落
下地点を見守っていた藤田は、暫定球を打ってフェアウェイに踏み出していった。最初のボールは、右ラフにあるカート道に当たって、大きく跳ねたものだった。いってみると30センチほどOBラインを越えていた。不運な1打であった。暫定球をインプレーのボールとしてプレーし、結局ダブルボギーとなった。
「まぁ、こういうこともありますよね。前半がいいスコアだったので、後半は慎重にやっていましたが、鳴尾のコースに“こんなに早い段階から意識しているんじゃない”と、喝を入れられたような気持ちです。ショック?それより、トータルでアンダーパーになったことの方が大きいと思います。このコース、この大会では、アンダーパーで第一集団にいることが大切だと思っていましたから。早くトップに立ってしまうと、苦しいゴルフになる。2、3打差で追いかけながらスパートのタイミングを図っていた方が好結果になると思っているんです」
不運をそれだけで終わらせずに、プラス思考へと切り替える藤田ならでは、シニアならではの術を身に着けているようだ。残り2日間の戦い方も、しっかりと頭の中にある。初出場初優勝への期待が膨らむ。
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