前日、3ホールを終えたところで通算6オーバーパーにまでスコアを落とした篠崎紀夫は、そこから堂々のカムバックを果たし、第3ラウンド終了時には通算1アンダーパーの4位タイにまで浮上した。この日は5バ―ディー・3ボギーと連日の60台をマークした。
通算6オーバーパーにまで落とした昨日の序盤に気持ちもゴルフも切り替えたという。それまでは「鳴尾のコースは、いろいろと試されるんです。例えば“このホールはティーショットで右サイドからドローボールを打ってこい”とか、“左のピンを狙いたいのなら、右から回してこい”といった調子で、コースが語りかけてくるんです。74を叩いた第1ラウンド。そして通算6オーバーパ
ーにまで後退した第2ラウンドの序盤まで、その誘いに乗ったプレーをしていました。
実は、自分はフェードボールヒッターで、どちらかといえばドローボールは苦手なのに、誘われるままにゴルフをやっていたらとんでもないことになっていたんです。それで、通算6オーバーパーになってからは、自分のゴルフに徹することにしました。ドローボールを求められても、きっぱり拒否して、“どこかフェアウェイの隅っこの方でもいいんで、打てるところに置かせてください”とか、グリーンに乗せておいてください“とか、コースにお願いしながら自分のスタイルを押し通したわけですよ」
すると、鳴尾のコースは、篠崎を認めてくれたかのように、絶好のポジションにボールを置かせてくれるようになったという。第3ラウンドは、川岸良兼との組み合わせ。「二人とも、ギャラリーが多いほど燃えるタイプなのに、応援の声や、ファインショットでもどよめきがおこらない。それなら、二人で盛り上げようってことになって“ナイスショット”とか“ナイスパット”と声をかけ合い、だれが見ているわけでもないのに、派手なガッツポーズや万歳ポーズも決めて、楽しくラウンドしました」
その結果は、ともにアンダーパーでのホールアウトとなり、川岸は通算2アンダーパーで2位タイ。そして篠崎は、川岸に1打差の4位タイと優勝を狙える位置に名前を連ねた。コロナ禍で試合が相次いで中止になる中、篠崎は所属する練習場でサンドウェッジのショットを繰り返していた。スウィングの大きさは変えることなく、スピード調整することでスウィングプレーンの確認や、タイミングなどをみっちりと練習した。おかげで調子は良い。そこに自分を取り戻させてくれた鳴尾のワナ。篠崎には、プラス材料しかない最終ラウンドである。
|