「ずっと耐えるゴルフを続けなければいけないので、疲れが溜まりますよ。ま、覚悟はしていたし、今の自分としては90点以上つけて良いゴルフが出来ていると思います」
第1ラウンドが69、第2ラウンドは70、そして第3ラウンドがまた69。安定した内容で通算2アンダーパーの2位タイにつけた岡茂洋雄にはドライバーを封印せざるを得ない理由があった。
「ここ数年、ドライバーイップスになって、どうにもならないんです。練習では、そこそこに打てるんですけど、試合やプロアマ競技となると、どこに飛ぶかわからない状態なんです。先輩プロからアドバイスを受けたり、自分でも抜け出すために試行錯誤は続けていますが、やっぱり
、うまく振れないし、打てないですね」
具体的な症状としては、ダウンスウィングに切り返すときに、意識していないのに突拍子もなく力が入ってしまう。もう、4年になる。
キャディーバッグからドライバーを抜いてしまったわけではない。もしかしたら、打てるようになっているかもしれない。一縷の望みを捨てきれないでいるのだ。本選手権、第1ラウンドの14番(パー5)で初めてドライバーを手にした。「結果は右の林へ吹っ飛んでいきました」。ドライバーショットでフェアウェイに打ち出せれば、2オンも狙えるホールである。第2ラウンドも、やはり、このホールだけはドライバーを手にした。結果は「左の林に入って、2打目は左打ちしなければなりませんでした。そこで、はっきりと決めました。この後は、ドライバーを封印して戦おう…って。ドライバーを使う意味がないどころか、ドライバーでゴルフを壊してしまいますから」
そして、ひたすら耐えるゴルフで目標設定したのは「1日1アンダーパーずつで4日間通算4アンダーパー。それができれば、満点をつけてやるって自分に言い聞かせたんです」
第3ラウンドは、ついに一度もドライバーを手にすることがなかった。「幸い、ドライバー以外のクラブは普通に打てるので、安全を優先したゴルフなら、なんとか組み立てることができるので、欲張らずに、コツコツとパー狙いでいって、うまくチャンスにつけられたら、必死にバーディを取る。そんな感じですかね」
岡茂は、もうひとつ時限爆弾のようなものを抱えている。こちらは、2002年に発症した左手首の月状骨軟化症だ。手術を勧められたが、痛みと付き合いながらプレーすることを選んだ。月状骨は3分の1ほどが壊死しておりいつパンクするか分からない。「壊れたら終わり。それまではゴルフを楽しもう」という悟りの気持ちでプレーしたら、ここまで続けられました」
岡茂には、夢もある。「絶対にイップスを克服して、この症状に悩まされているゴルファーのためにも本を書きたいんです」というのが、それである。
ドライバーを封印したままで臨む最終ラウンド。混戦模様になれば、それが逆に“吉”と出るかもしれない。これもまた、ちょっとした夢であろうか。
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