渡部光洋は、午後組の12時45分スタートにもかかわらず、ついつい早起きしてしまった。目が覚めたのが朝5時ごろだった。スタート時間までは、たっぷりあった。なにをやるではなく、時間を持て余して過ごした。「かえってそれが良かったのかもしれませんね」と言った。10番からのスタート。12番からバーディ、バーディ、イーグルという出だしだった。12番はピン左6メートル。13番で右2メートル。14番(パー5)は、残り200ヤードを5番アイアンで攻めてピン上1.5メートルにつけてのイーグルだった。15番でボギーを叩いたものの18番(パー5)でバーディをもぎ取って、前半を32で折り返した。後半は、ボギーが先行した
ものの、すかさず3連続バーディ。7番、9番でボギーとしたものの、68でホールアウト。4アンダーパーで首位と2打差の2位タイとなった。
「上出来です。ほんとに上出来です。こういう難しいコースは苦手なんですけど、調子をセーブしながらプレーできたのがよかったのだと思います」と言った。“調子をセーブ”というのは、実は、「いつも僕は、鼻息が荒いゴルフをしちゃうんです。荒すぎて自滅するというタイプのゴルフなんですよね。その鼻息の調子をうまくセーブできました(笑)」と言う。
この人、シニアの世界では、遅咲きのシンデレラボーイと言われている。それは、ちょうど昨年9月のレギュラーツアー「パナソニックオープン」でのことだ。所属コースの小野東洋GCの井戸木鴻樹が推薦出場するはずだった。ところが井戸木が故障のために急遽、かわって渡部に推薦が舞い込んできた。第1ラウンドに7位(結果は48位T)と健闘したことで一躍名前が轟いた。そしてシニア入りして、昨年のシニア最終戦の「いわさき白露シニア」でプレーオフを制して初優勝を果たしたのである。そして今季のシニアツアーに参戦できることになった。それが遅咲きのシンデレラボーイと呼ばれる所以なのだ。
今季6戦目。井戸木鴻樹、そして中村通とともに練習ラウンドをプレーすることが多い。「すごく勉強になっています」という「何がって、例えば大先輩のプレーは、慌てず騒がずなんです。ミスしたときも、そうでないときも、歩くテンポも、表情も変えずに、自分のリズムでプレーしていくんですよね。それが、いちばん勉強になりますね。僕の根底に、鼻息の粗さがあるので、すぐにミスすると顔にでますしね(笑)」と語った。
第1ラウンド。今日の好スコアは、そのリズムにあった。スウィングリズム、歩くテンポ、“慌てず騒がず”を念頭に「苦手な、難しいコースの克服」につながっていたという。それも、早起きをして時間を持て余したところから、そのテンポを守れたことが始まっていたという。「明日からも、これができればいいんですけどねぇ。問題は、鼻息の荒さですかね(笑)」と言った。
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