第1ラウンドで73だった手嶋多一は「正直、カットラインすれすれだな」と内心思っていた。だから「今日、頑張らないと……」という気持ちが交互に出入りする。スコアを縮めるゴルフをしなければいけない。その思惑通り1番、そして3、4番とバーディを奪って「なるべく早い段階で縮めよう」というプランは、成功した。けれども、そこからが苦しい。前半のバーディはその3つ。あとはパープレーで折り返した。本来なら6番(パー5)で取りたかったけれど、それもできずにいた。「ティーショットがどうしてもうまくいかなかったんですよ。もともとドロー系なんですけど、振ると(もっと)左へいくという癖は、ジュニア時代から変わらないんです
ねぇ(笑)」と笑顔で話してくれた。
手嶋のプレーは、すこぶる速い。決断が速く、決めたらスッと打つ。それはチャンスでもピンチでも変わることがない。10番、11番とバーディ。10番はラフからうまく1メートルに寄せてバーディ。11番(パー3)はピン手前6メートルからの距離を沈めた。唯一のボギーは、12番ホール。左のラフから出して3オン2パットだった。左へ引っかかるティーショットが多くなってきた後半も、手嶋の技の引き出しを駆使して凌いだ。15番、そして18番(パー5)とバーディを奪って、通算5アンダーパー。カットの不安を見事に払拭して、たちまち上位に食い込んできた。「今日は、アイアンショットとパッティングに助けられました。やっぱりパー5のティーショットをしっかりとフェアウェイに置いて、バーディを狙っていかないといけませんね」2021年大会のチャンピオン。“もうひとつどうですか?”という質問に「いやいや。マイペースで行きますよ」という手嶋の内心は、虎視眈々かもしれない。
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