シニアの新世代
シニアツアーに新しい波が押し寄せてきている。
それも、かつてないほどの大波である。
6月の開幕戦から日本シニアオープンゴルフ選手権競技前までの7試合の優勝者を順次並べてみよう。植田浩史、室田淳、真板潔、湯原信光、髙見和宏、池内信治、加瀬秀樹。なんと室田以外は全員シニア初優勝の選手である。しかも、真板、髙見、加瀬は、同ツアーのルーキーで50歳。植田と池内がシニア2年目、湯原は4年目。シニアの新世代といえる。
真板は、第3戦のPGAフィランスロピーシニアトーナメント(7月7~9日、中伊豆グリーンクラブ)、髙見は第5戦のファンケルクラシック(8月20~22日、裾野カンツリー倶楽部)、加瀬は第7戦の日本プロゴルフシニア選手権での優勝だったが、そろって勝ち方も凄かった。真板は、最終ラウンドの大接戦を終盤の15番からの3連続バーディーで抜け出した。ちなみに、この試合で2打差の2位に食い込んだのもルーキーの奥田靖己だった。髙見は、1打差の2位からスタートした最終ラウンドに68をマークしての逆転優勝。
そして加瀬である。
公式戦の日本プロゴルフシニア選手権で3日目に持ち前の長打を生かして2イーグルを含む65と爆発して倉本昌弘とともに首位に並ぶと、最終ラウンドも69とスコアを伸ばしての優勝であった。加瀬は1990年の日本プロゴルフ選手権(大阪・天野山)がプロ初勝利だった。あれから20年。シニア入りしての初優勝が、日本プロゴルフシニア選手権というのも、偶然ではない何かを感じる。その加瀬は、全英シニアオープンに出場した際にB・ランガーやT・ワトソンのゴルフを見て、50歳にして目覚めたことがあったという。
「状況に応じて低く抑えたショットを巧みに織り交ぜる。自分も、ハイドローボールで飛ばすだけじゃいけない。プレーの幅をもっと広げなければ…ということを強く感じて、帰国してすぐに抑える打ち方を練習し始めた」
“50の手習い”がシニア公式戦タイトルとなって結実した。
今年のルーキーたちは、意気込みも違う
髙見は、シニア入りを楽しみにしていたという。
「レギュラーツアー時代に味わった優勝争いの緊張感。あの感じをシニアツアーで改めて味わいたいと思っていました。シニアの中で優勝争いをするには、それなりの準備もしておかなくてはいけません。トレーニング、スウィングチェック、ショット調整と、戦える自分に仕立ててきたつもり」。
シニアツアー入り後の自分のゴルフを考え、強化していたというのだ。髙見といえば、かつてはジャンボ軍団の一員として知られていた。シニア入りを前に、中山徹を中心にした雑草軍団と行動を共にした。2月。室田や加瀬、レギュラーツアーの宮瀬博文らの雑草軍団が、サイパンに集結した。12日間に及ぶキャンプ生活を送るためだった。そこに髙見も参加していた。
今年のルーキーたちは、意気込みも違う。日本シニアオープンゴルフ選手権でも、ターゲットを優勝に絞って臨んでくる。
新戦力の前に立ちふさがる壁がある。中嶋常幸、尾崎健夫、室田淳、髙橋勝成のシニア4強の存在だ。
ナショナルオープンとなると、そろって目の色を変えてくる。このうち、タイトルをつかみ取ったのは中嶋、髙橋両選手なのだが、中嶋は、こう語っている。
「確かに、毎大会、勝者はひとりだけではあるけれど、それぞれが、あの選手たちを打ち負かさないと優勝はないと考え、強い気持ちで戦いの舞台に上がる。ナショナルオープンには、みんな特別な思いがあるからね。だから、誰が勝ってもおかしくない展開になる。勝者になるか、ルーザーになるかは、本当に紙一重の差だと思う」 |