|
|
|
|
|
|
【小平智は、優勝カップを抱えているイメージを描き続けて戦った】 |
|
|
第4日
|
|
競技報告:塩原義雄 写真:Y.Watanabe |
|
|
迫られても、追いつかれても、小平智には、動揺も、苦しそうな表情もなかった。最終ラウンド最終組での前年度大会1、2位だった池田勇太とのマッチレース。小平が意識していたのは、自分がスコアを伸ばして優勝することで、ラウンド中はずっと、戦い終わった自分が優勝カップを掲げているイメージを途切れさせることなく頭に描き続けていたという。
「前半は、後半になって優勝に向かうための準備をして、後半は攻めの姿勢を崩さずに、そして終盤は全力でスパートする。そんな(自分のゴルフの)展開を考えてスターティングホールのティーに立ちました」
ゴールまでの道程では、どんなスコアであっても一喜一憂しない。ボギーを叩いて
|
|
も、その場で受け入れるだけ。バーディを奪っても、ガッツポーズするわけでなく「それが当然」と涼しい顔で次のホールに向かう。この1か月、小平がメンタル面のカウンセリングを受けている脳神経外科の林成之医師から教えられ、アドバイスされたことを実践していた。
その姿勢が、ちょっと崩れたのは14番(パー5)だった。13番をボギーにして池田に並ばれた直後のホールである。池田は左ラフから林越えにフェアウェイに打ち出した。小平は、最初アイアンを手にしていたが、3番ウッドに持ち替えて果敢に2オンを狙い、このショットでグリーンをとらえた。勝負に出た1打であった。ところが、グリーン上で3パット。ピンチを1パットでしのいだ池田と同じパーでのホールアウトになってしまった。
「相手は見ない、と言いながら、あそこは勇太さんを見て一気に突き放すチャンスとファーストパットを狙いすぎて(パッティングに)パンチが入ってしまいました。自分の弱さが出たホールでした」
それを最終ラウンドの後半になっても自覚できたところが、逆に小平の成長、さらにカウンセリング、メンタルトレーニングの効果を物語っていた。
15番ホールで池田のロングパットがカップをかすめた後、小平は7メートルの距離をカップ真ん中から決めた。また1打のリード。このときも、ガッツポーズはなく、ギャラリーの歓声に軽く右手をあげて応えただけだった。17番で、今度は池田がバーディを奪い、また両者が並ぶ。そして迎えた最終18番ホール。池田のドライバーショットはバンカーに飛び込んでいった。小平はバンカーの先、フェアウェイのベストポジションに。池田の第2打はバンカーのアゴをクリアさせる高さを求められる状況でグリーンを狙えずに3オン。小平の第2打はグリーン奥に乗った。
「並んで最終ホールを迎えたときですか? プレーオフは考えていませんでした。自分がバーディを奪って優勝する。それだけです」
バーディーフィニッシュにするには難しすぎる距離(およそ12メートル)、ライン(下りスライス)で、打ち切れなかったが1メートル弱に。池田がパーパットをはずした後、小平は残したパーパットを沈めて勝負を決めた。必勝宣言して臨んだ日本オープンであったのに、ウィニングパットを沈めたのに、池田に昨年のリベンジを果たしたのに…。小平はガッツポーズをすることはなかった。「ものすごくうれしかったけど、負けた人もいるわけで、あの瞬間は静かに幕を閉じたかった」
この優勝で来年の全英オープンへの出場が確実になった。「2回目です。前回は、コテンパンにされましたから、今度は、少しは成長したところを実感したいですね。その前に、今シーズンです。まだ賞金王が決まったわけじゃない。自分もあと3勝するつもりでいます。英樹(松山)や遼(石川)のいる世界にもいきたい。自分を伸ばせるだけ伸ばしてやりたい」
日本オープンのタイトルは、小平にとって世界への扉を開ける鍵になる。
|
|
その他の記事はこちら
|
戻る
|
|
|
|
|