菊地絵理香が、10バーディ・2ボギーの64というビッグスコアをマークした。このスコアは大会タイ記録(2021年大会烏山城CCでの西村優菜とタイ)である。
「コースが難しいので、バーディ数を数えることなく、しっかりと1打1打に集中してやったらこのスコアになりました」と嬉しさを表に出すことなく、むしろ噛みしめるように言葉を選んだ。菊地にとっては、すぐ近くにある片山津GC白山コースで開催された2015年大会での苦い想い出がある。優勝争いをしていてプレーオフにもつれこんだ。チョン インジ、菊地絵理香、季美香の3名である。当時のチョン インジは圧倒的な強さを見せていた。菊地は、プレーオフ4ホール目
で力尽き惜しくも敗れた。いや、それ以前に72ホール目の18番でパーをセーブ出来ていたならば優勝というチャンスを外してプレーオフとなっていたのだ。忘れ得ぬ記憶。この芦原ゴルフクラブにやってくるときに、小松空港からの途中で片山津ゴルフ倶楽部を通過する。そのときにふと思い出したのである。
その悔しさをバネにして菊地は、ずっと戦ってきた。そのときは「メジャーは、たくさん苦い経験をして勝つもの」という言葉を呪文のように繰り返してきた。「でもね。最近の若い選手の勢い、体力、実力は、そういう感じじゃないんですよね」と言った。確かに、勢い、覇気がチャンスを生み勝利を手にすることはある。丁寧に、丁寧に経験を積んで、1打をおろそかにせずにチャンスを待って勝利の道を貫くというチャンピオンシップの戦いは、勢いや覇気に追い越されることもある。
けれども、今日、第2ラウンドの菊地絵理香のプレーは、圧巻だった。1番でいきなりバーディ。2番ボギーのあと3連続でのバーディ。さらに8、9番とバーディを奪って折り返した。「調子が完璧なわけではないんです。もちろん、ラッキーもありましたよ。8番のバーディも、第2打をグリーン外して、そこから10ヤードのアプローチが入っちゃったし、次の9番でも、第1打が左に曲がってバンカーに助けられ、残り145ヤードを7番アイアンで打ってピンまで10メートル。それが入ってバーディ」というラッキーがあったのだと菊地は語った。
後半は、11、13、16、そして18番とバーディ。14番でボギーとし、33。トータル64である。
「絶対に浮かれてはいけない。メジャーは必ず罠がある」という想いは、プレー中忘れることはなかった。いや4日間、72ホール、忘れない、と言った。だから目の前のバーディで浮かれない。好スコアでも、また試合途中の出来事だ、という気持ちが強い。誰が決めたのか、トーナメントの72ホール。通常4日間。それはまるで、ゲームをストーリーだとすれば、各18ホール「起・承・転・結」ということになる。菊地も、ドラマチックに変わる3日目の「転」のゲームが重要だという。「そうなんです。問題は、まず明日(第3ラウンド)ですね。それをどうクリアするかです」と語った。ムービングデー。このゲーム展開は、見逃せない。
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