原英莉花は、驚異的といえるほど、長い距離のパッティングが、よく入った。1番で7メートル。3番(パー3)は、なんと22メートル。5番で5メートル。8番は9メートル。15番が10メートル。気持ちが良いほど入っていた。もちろん、入らないことも1回だけあった。7番で14メートルからの3パットである。それにしても、脅威、いや神がかりといいたくなるほど小気味よかった。
誰もが、難しいところにホールが切られていて悩み抜いたはずだ。原英莉花の心境は、そこから脱却していた。たとえば3番で22メートルの距離を入れたとき「入らなかったら、どうしようなんて考えないようにしたんです」とう言い切った。普通はパッティ
ングをするときには、さまざまなことを考え、迷いが横切る。オーバーしたらどうしよう。ショートしたら、3パットもあるかも知れない。もっとラインが切れる。タッチを合わせたら大きく曲がる……などなど、10以上のことを考えると言われる。ボギーならば、次のホールから、どこで取り返せるのかなども浮かんでくるという。そこを振り切って、考えないようにして、目の前の1ストロークに集中するわけだ。言葉では簡単なことだけれど、人間の煩悩や、欲などは、簡単には消せないのである。それがゴルフでは、1打ごとにやってくる。
原は、第2ラウンドを終えて通算7アンダーパー。首位は、菊地絵理香の通算10アンダーパー。3打差を追う立場でスタートした。菊地との競り合いは、伯仲していた。追いつ追われつの展開だった。菊地が、ボギーのピンチを凌ぐ見事なパーパットを決め、原は、長い距離のバーディパットを沈める。相手にとっては、いちばん見たくない光景だっただろう。けれども、原とて、幾度となくバーディパットを逃してもいた。そのイライラと、ボギーを凌いでパーを死守するプレッシャーが、バチバチと閃光を発しているようでもあった。
9番から6ホールでパーを重ねたあと、原を勇気づけてくれたのは、15番(パー5)のバーディだった。10メートルを沈めてガッツポーズ。16番をボギーとしたものの、18番でも3打目のバンカーショットから2メートルに寄せてのバーディで、この日68。通算11アンダーパー。2位の菊地と1打差で最終ラウンドを迎えることになった。
「いい形で終えられる様に、明日一日自分を信じてプレーをしたいと思います」と言った。3年前の本大会の優勝時は新型コロナウィルス感染症拡大防止のため、一般非公開での開催。今回は多くのギャラリーの前だ。「本当にたくさんの方が応援してくれて、本当に声援が力になると思いますし、明日は盛り上がり過ぎない様に落ち着いてプレーをしたいなと思います」と言い、盛り上がり過ぎないようには、どうする?という質問には、「自分が、いちばん楽しむことかなと想います」と語った。最終ラウンド、めいっぱい楽しんで欲しい。
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